5月末、気象庁は日本の二酸化炭素(CO2)の濃度が上昇し続けていると発表した。昨年のCOP21で世界196カ国が世界の気温上昇を産業革命前の2℃未満を目指すことに合意したが、実現のためには二酸化炭素排出を抑制する低炭素社会を実現しなければならない。そのときクルマは「電化」と「水素」がキーワードになると、モータージャーナリストの清水和夫氏は語る。

 6月上旬にドイツで開催されたメルセデス・ベンツの技術展示会「Tec Day2016」に参加してきました。その際に配布された資料の冒頭に書かれていたのが「All Mercedes-Benz model series will be electrified」という言葉です。メルセデスは今後すべての車両を“電化”していくことを宣言したわけです。

 これはトヨタが昨年秋に発表した長期目標「トヨタ環境チャレンジ2050」とぴったり符合します。トヨタは2050年に新車の二酸化炭素(CO2)排出量を2010年比9割減という高い目標を掲げました。既存のエンジンをどれほど高効率化しても、CO2排出量を9割削減するのは無理ですから、すべての新車はハイブリッド技術と組み合わせるか、燃料電池車(FCV)や電気自動車(EV)のようなCO2排出量ゼロのクルマにしなければなりません。いきなり脱エンジンを実現するわけではありませんが、会見では「エンジンだけを搭載したクルマは生き残れない」と言っています。

2016年秋に発売が予定されるトヨタ「プリウスPHV」

 ハイブリッド車(HV)は電力をうまく活用することでCO2排出量を抑えているわけですが、クルマが電化すれば「Connected(つながる)」「Automated(自動化する)」が可能になり、渋滞解消や交通事故減少などによるCO2排出削減効果も期待できます。

 電化とクルマ社会全体の効率化についてはまた別の機会に解説するとして、名実ともに自動車業界を牽引する2社がほぼ同時期に電化を明言したことに意味を感じてしまいます。実際に、クルマの技術は確実に電化が進んでいます。アイサイトなどの予防安全技術はセンシング技術が胆になっていますし、高度化するナビシステムもITの恩恵にあずかっています。急速に進展しつつある自動運転もITが必須ですから、クルマの電化は必定と言えます。

 大切なのは、そのとき使われる電気はどういうものなのか、一次エネルギーの“素性”です。たとえば、水素で発電するFCVは走行時にCO2を発生せず、テールパイプから出てくるのは水だけですから、「Tank to Wheel(タンクからタイヤまで)」ではゼロエミッションです。しかし、化石燃料による火力発電の電力で、水を電気分解して得た水素は生成過程で相当量のCO2を排出しますから、「Well to Wheel(井戸からタイヤまで)」で見ると、FCVもゼロエミッションになりません。エネルギーの議論はやはりTank to Wheel ではなく、Well to Wheelで考えるべきです。

Next水素がエネルギーとして魅力的な理由