「トータルプロデュースさせて欲しい」という逆提案から始まった

 「TRAIN SUITE 四季島」では、デザインだけでなく、サービス内容なども含めてほぼすべての工程に携わったという奥山氏。それだけに細部に至るまで、こだわりの強さを感じさせるが、5年もの年月をかけて完成させた裏には、並々ならぬ思いもあったはずだ。

――まずは、どうやってこれらのコンセプトを生み出したのか、きっかけや意識していた点を教えてください。

奥山氏

奥山 それまでに秋田新幹線や北陸新幹線のデザインプロジェクトに参加したこともあり、JR東日本さんは当社のことをよく理解した上で指名して下さったのですが、最初は内装と外装をデザインするぐらいのつもりで依頼を受けたと思います。ただ、僕もそれまで鉄道事業に対して感じていた疑問というのがあったので、それをどうにかしたいという気持ちもありました。つまり、現代の鉄道事業というのは、運輸業ではなく実はサービス業だということです。時間通りに正確に安全に人と物を運ぶというのは、当たり前なことであり、もちろん大切なことですが、収益の大部分は運賃などによる鉄道事業ではなく、商業施設などの関連事業から入っているのが現状。にも関わらず、それを提供している側のメンタリティーが追いついていないんですよ。

 というのも、僕は週に何回もいろんな新幹線を利用していて疑問に思うことがありました。同じ値段を払っているのに、路線によってサービス内容が全然違っているなんて、顧客目線からすると気になりますよね。また、プラスアルファの料金を頂くならば、それに見合った経験を持ち帰っていただけるようにしたかった。そのためには一本筋が通ったサービスを提供したいので、「車両のデザインだけではなく、ユニフォームもロゴも名前も、また、料理に関わる器だけでなくすべての車内備品もトータルでプロデュースさせてください」と逆提案したんです。

 最初はJR東日本さんも驚いていましたが、それくらいしないとお客様に四季島のメッセージを伝達できないと思ったわけです。できれば待合室や駅舎の一部も含めてまるごとやらせていただけるなら是非お受けしたい、とお伝えして始まったのがクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」というプロジェクトです。

【TRAIN SUITE 四季島】

 2017年5月1日より運行が開始されたKEN OKUYAMA DESIGNがデザインした10両編成、定員34人の豪華寝台列車。色濃く変わる四季のうつろいと、いままでにない体験や発見を通じて、まだ知らないことがあったという幸福を実感してもらいたいという思いを込めて、コンセプトは「深遊探訪(しんゆうたんぼう)」。甲信越を回る1泊2日のコースから、3泊4日で東北や北海道まで訪れるコースまであり、モダンで斬新なデザインが車両ごとに楽しめることも話題となっている。


TRAIN SUITE 四季島の外観(画像提供:JR東日本)
DXスイートの内観(画像提供:JR東日本)
展望車の内観(画像提供:JR東日本)

Nextビジネスデザインを考えるのがプロデューサーとして…