「世の中に出し広める意義がある」と採算度外視で引き受け

 もはや“詰み”とも思えるこの状況を救ったのは、またしても清水氏が大学院進学後に積極的に築き上げてきた人脈だった。

 清水氏が最後の望みをかけてドアをノックした先は、北海道に本社を置くソフトウエア企業「スマイルブーム」。同社取締役の徳留和人氏とはハッカソンイベントなどを通じた人脈でつながっており、SPARX日本版移植で困っていると打ち明けたところ、同社が採算度外視で開発を手がけてくれることになった。

スマイルブーム取締役の徳留和人氏 コンピュータエンターテインメント協会 (CESA) が主催する、国内最大のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC(コンピューターエンターテイメントデベロッパーズカンファレンス)」運営委員会のメンバーも務める(ビジネス&プロデュース分野担当)
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 他のソフトウエア会社とは到底折り合えないほどの資金不足で、リリース後に売り上げなどから開発費用を回収できる見込みも薄い。ソースコードにはざっと見ただけでも手を加えるべきところがたくさんある――。そんな“いばらの道”ともいえるSPARXの日本版開発という仕事をなぜスマイルブームは引き受けたのか。

 徳留氏にぶつけてみると、「いわゆるシリアスゲーム(エンターテインメント性のみを目的とせず、教育や医療といった社会問題の解決を主目的とするコンピュータゲームのジャンル)の社会的必要性について以前から理解していて、いつか機会があれば何かしらの形で貢献したいと考えていたから」という答えが返ってきた。

 「SPARXというゲームにはきちんとエビデンス(科学的・客観的根拠)があり、世の中に出して広める意義がある。そして何より『心の病に苦しむ多くの人の手助けをしたい』という清水さんの情熱にもほだされた。ゲームの開発を事業として行っている当社にとっても、社会的課題を解決するのに、ゲームを使ったこういうアプローチがあるんだということを示したかった」(徳留氏)。

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