厚生労働省の調査によれば、近年、うつ病やうつ状態などを含む「気分障害」に苦しむ患者の数(推計)は、100万人を超える状況となっている(平成26年調査より)。しかも、これは患者として調査で把握されている人数にすぎない。実際には、治療やカウンセリングなどの措置が必要にもかかわらず、受けていない/受けられない人がその3倍はいると見られている。

 「最近、何だかやる気がわかない、憂うつな気分になる。精神的に何か問題があるのかもしれない」。このように思っても、いきなり精神科や専門クリニックへ足を運ぶことには抵抗を感じる人も多いだろう。結果、誰にも相談できず、一人で悩みを抱え続けてしまう――。そんな人たちを少しでも救うべく開発された「あるモノ」が注目を集めている。そのモノとは………なんと「ゲーム」アプリだ。

 ニュージーランドの大学で開発された「SPARX(スパークス)」というゲームアプリがそれ。ゲームを遊ぶだけで、感情をコントロールする方法論が自然と身に付き、心理ケアの専門家からカウンセリングを受けたときとほぼ同等の効果が期待できるという。

 SPARXの日本版を手掛けたのは、東大発ベンチャー、HIKARI Lab(東京・中央)。なぜ海外発のこのようなアプリを日本に持ち込んでローカライズした上でリリースしようと考えたのか、同社の清水あやこ代表に経緯などを聞いた。

 心に不調をきたしても、なかなか適切なケアが受けられずに何年もつらい思いをしたり、家族も巻き込まれたり……。

 身近にそうしたケースを目の当たりにした経験を持つ、HIKARI Lab代表の清水あやこ氏は、「ちょっとおかしいなと感じたら、自ら気軽に心理ケアを受けることが当たり前の社会にしたい」と考えていた。でも、どうしたら心理ケアの敷居を下げることができるのだろうか――。

HIKARI Lab代表の清水あやこ氏
上智大学国際教養学部を卒業後、外資系証券会社に入社し数年間勤務。退社後、東京大学大学院に進学し、臨床心理学コース修士課程を修了。ネットを使った心理ケアのカウンセリングなどを行うHIKARI Labを立ち上げた。
クリックすると拡大した画像が開きます

 そんなとき出会ったのが、ニュージーランド・オークランド大学の研究者と臨床医のチームによって開発された認知行動療法(後述)に基づくゲームアプリ「SPARX(スパークス)」だった。

SPARX日本版。Android版とiPhone/iPad版アプリが入手可能で、価格は2160円
クリックすると拡大した画像が開きます

 「なぜニュージーランド?」…こう思った人も多いだろう。それにはもちろん理由がある。あまり知られてはいないが、OECD(経済協力開発機構)の調査データによれば、ニュージーランドは先進国の中で最も10代の自殺率が高い国となっている(参考記事:The highest rate of teen suicide in the developed world)。

 その原因について詳細な調査を行ったところ、自殺した10代の若者たちは、専門家のカウンセリングを受けることや医師に診断されることに抵抗があり、治療を受けることにも消極的で、結果として自殺に至るケースが多いことが判明した。そこで、「10代の若者が楽しんで取り組める方法で何かできないか」という話になり、同大学でゲームを開発することになったという。

Next独創的なアイデアが高く評価され、国連などから賞を…