高校時代の体験から決意、外資系会社を脱サラし東大で学びつつ起業

 清水氏が心理ケアに興味を持つようになったのは、高校生のとき。周囲に心の病気にかかった人がおり、苦しむ姿を間近で見続けていたという。その高校在学中に留学した清水さんは、海外では心理療法のカウンセラーが身近な存在となっており、心の状況が悪化する前に気軽にカウンセリングを受け、問題を解決する文化が定着していることに衝撃を受けた。

 「日本でも、同じく心の病に悩み苦しむ多くの人たちが、状況が悪化する前にもっと気軽に心理ケアを受けられるようにしたい。いつか使いやすさや楽しさに重きを置いた心理ケアサービスを自分が提供できたらいいなと思うようになったんです」(清水氏)。

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 その情熱の炎は、高校卒業後もずっと消えることがなかった。清水氏は、大学卒業後にいったん外資系証券会社に入社。そこで数年間必死に働いてお金をためた後、会社を辞め、東京大学大学院の教育学研究科臨床心理学コース修士課程に進学した。

 「ICT(情報通信技術)と組み合わせたら、もっと心理ケアは使いやすいものになるはず」――。そう考えた清水氏は、必要となりそうなプログラミングをはじめとするICT分野の様々な技術を、研究の傍ら独学で勉強。さらに、そうして得たスキルを生かして東大在学中の女子学生だけを対象にしたハッカソンイベントを主催するなど精力的に活動し、ICT分野に詳しい学内外の人たちと交流を深め、人脈を広げていった。

東大女子ハッカソン(2015年に開催された第2回の写真)
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 SPARXと出会ったきっかけも、そうして築き上げた人脈を通じて得たものだった。ある日、日ごろから親しくしているエンジニアが「こんなアプリがあるよ」とSPARXを紹介してくれた。最初は「認知行動療法を学べる? ホントかな」と半信半疑だった清水氏だが、実物を見た瞬間、「こんなアプローチがあるなんて!」と衝撃を受けたという。

 ぜひSPARXを日本でも広めたい。でも、英語版アプリのままでは誰も遊んでくれないだろう。日本版を作らなければ――。そう決意した清水氏は、思い立ったが吉日とばかり、すぐに開発チームにコンタクトを取ろうとオークランド大学にメールを送ったという。いったいどんなメールを送ったのか。「無謀にも、『日本版を作りたいから、ライセンス供与について相談させてください』とメールを送ったんです」(清水氏)。

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