研究開発から生産まで担える世界初の半導体製造装置

 現時点のミニマルファブの販売実績は20台だ。完成している装置は現在のところ、全半導体製造工程のうちの約7割で、製造できるのはトランジスタに限られる。今後ミニマルファブ技術研究組合では、残りの約3割の開発を急ピッチで進め、数年後には集積回路の製造も可能にする計画だ。

 「ミニマルファブは必要に応じて既存のメガファブ(巨大半導体製造工場)との併用も可能です。当面ミニマルファブで製造できない工程に関しては、メガファブを利用するというハイブリッドプロセスの選択もできます」と西村氏は話す。

 加えて、通常、半導体デバイスの製造では、設計費という固定費が大きな割合を占める。少量多品種化においては、設計費の低減も重要な課題だ。それに対し、原氏は設計費を安価に抑えるための方策も考えた。それは、顧客に対し設計のプロがインターネット経由で設計を有償で提供するというものだ。

 「これまで半導体メーカーが提示する半導体デバイスの製造コストには、高額な設計費が含まれていました。それに対し、ミニマルファブでは、製造コストと設計費を完全に分離することで、透明性と自由度を高めることにしたのです。少量多品種とはいえ、設計には共用可能な部分も多く含まれるはずなので、設計の効率化、期間の短縮化、低コスト化につながります」と産総研の原氏は語る。

 また、2016年4月に横河ミニマルアプリケーションラボがオープンしたことで、現在、同社には、国内外から企業や研究機関による問い合わせや見学依頼が殺到しているという。

 「今後は、初めて自社内に半導体製造装置を保有するというお客様も増えていくと思われます。特に短期間で試作し、研究開発を加速させたい企業の研究所にとってミニマルファブは、非常に有用なツールとなります。そのため、装置の選定など導入準備から導入後のアフターサービスまでトータルでサポートしていきます。アプリケーションラボでは、有償でサンプルの試作、評価も可能ですので、気軽に足を運んでいただければと思います」と西村氏。

 このように、ミニマルファブは、R&D&P(Research and development and product)、すなわち、研究開発から量産までを行うことができる世界初の半導体製造装置となる。IoT時代を迎える中、半導体デバイス開発の障壁を大幅に下げるミニマルファブが、今後、社会に一体どのような変革をもたらすのか、今から楽しみだ。

(取材・文/山田 久美=科学技術ジャーナリスト)