前回の「究極の少量多品種化を実現! 半導体業界を揺るがす『ミニマルファブ』」では、ミニマルファブの研究開発を推進した産業技術総合研究所(以下、産総研)ナノエレクトニクス部門ミニマルシステムグループ長の原史朗氏に、ミニマルファブの特徴と意義、研究開発を推し進めた背景について伺った。

 今回は、2016年4月、東京都武蔵野市の横河電機本社内に、ミニマルファブのインキュベーションセンター「横河ミニマルアプリケーションラボ」をオープンさせた横河ソリューションサービスに、同社がミニマルファブのコンサルティングから販売、導入、アフターサービスまでを担う理由、具体的なミニマルファブの機能などについて伺った。

中堅・中小企業が自社の技術を持ち寄り開発

 「今までは、半導体デバイスの開発費用が障壁になっていたケースも数多くあったと思われます。しかし、ミニマルファブの実用化により、半導体メーカーだけでなくあらゆる企業が自社で半導体デバイスを低コストかつ短期間で製造できるようになれば、世の中は大きく変わっていくと思っています。今後、どのような面白い製品が生まれてくるのか、今からとてもワクワクしています」

 こう語るのは、横河ソリューションサービスで半導体サービスセンター長を務める西村一知氏だ。

横河ソリューションサービスで半導体サービスセンターの西村一知センター長(前列一番前)と同センターのメンバー(時計回りに、永井亨氏、柴育成氏、北山侑司氏、奥田修史氏、村國大志氏)
クリックすると拡大した画像が開きます

 同社がミニマルファブの研究開発プロジェクトに参画するようになったのは、産総研の原氏が「ミニマルファブ技術研究組合」を設立した2012年5月のこと。経済産業省の支援の下、2012年6月~2015年3月にわたり実施された国家プロジェクト「革新的製造プロセス技術開発(ミニマルファブ)」に参画し、原氏や中堅・中小企業を中心とする約30社の半導体製造装置メーカーとともに、ミニマルファブの実用化を目指すこととなった。

 同社の半導体サービスセンターは元々、約17年前に半導体製造装置の製造、販売、アフターサービスを行うために設置された部署だった。しかし、このビジネスはすぐに撤退することとなり、そこでやむを得ず始めたのが、他社の半導体製造装置のアフターサービスを請け負うという事業だった。そういった中、2012年に、産総研が国家プロジェクトを立ち上げるという情報を聞きつけ、ミニマルファブの販売とアフターサービスを一括して請け負う企業として名乗りを上げたのである。

 同社は原氏から、このビジネスが非常に有望であることを論理立てて説明を受け、感銘を受けたという。加えて、装置の製造は行わないものの、半導体製造工場全体のソリューションを提供することで、半導体業界や顧客に貢献できるのではないかと考えた。

 「ところがうれしい誤算がありました。原さんから『販売とアフターサービスを担うのであれば、すべての装置の研究開発に携わり、全製造工程を十分に理解しておく必要がある』と言われ、約3年間にわたり、産総研の原さんの研究室に当社の若手社員4人を出向させ、一緒に研究開発を進めることになったのです。その結果、71機種あるミニマルファブのすべての装置に精通することができました」と西村氏は語る。

 ミニマルファブの装置群は、前編でも紹介した通り、「フォトレジスト」や「成膜」「エッチング」といったように、半導体の製造工程ごとに細かく分かれている。全部で71種類ある装置はそれぞれ、開発を担当した企業が異なる。いずれも中堅・中小の半導体製造装置メーカーで、これまでは下請け業者として大手半導体メーカーに装置の一部を納品してきた。中には主に大学や研究機関向けに量産機ではなく試作機を開発し納品してきた中小企業もある。

 そのような約30社におよぶ企業がそれぞれの技術を持ち寄り、一からミニマルファブの開発に取り組んだのだ。それを取りまとめていったのが、原氏と原氏の部下で、開発プロジェクトのサブリーダーを務めた産総研のクンプアン・ソマワンさん、そして、横河ソリューションサービスからの出向者4人を含む、15人ほどの開発部隊だったのである。

Next世界に誇る箱庭技術で、徹底的な標準化を実施