毎日のように腸内菌を解析し、その結果をパフォーマンス向上に役立てるという行為が、近い将来、アスリートにとって当たり前となるかもしれない。AuB(オーブ)の中枢部を訪れ、腸内解析プロセスの流れと、研究の行き着く先について話を聞いた。

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深まるアスリートの腸内環境リサーチ

 腸内環境の解析によってアスリートのパフォーマンスを維持、向上させようとするAuBの試み。その中枢機能は岡山大学構内の研究施設にある。ここで遺伝子解析の役割を担う金子亮氏は同社が手がけるビジネスの意義についてこう話す。

 「腸内細菌についてはまだ分かっていないことも多いですが、毎日、少しづつ前進はしています。そのヒトの腸内にどんな菌がどれだけあるのかを完全に把握するのは非常に困難なミッションで、これを達成するのはまだ少し先になるでしょう。でも僕らが日々行っている地道な作業によって、世界中にほとんどデータのない“アスリートの腸内の特徴”について、少しづつ分かってきています。それだけでも仕事の意義を感じますし、近い将来には、疲労回復、集中力、持久力、瞬発力、精神力といった様々な分野にそれぞれ影響を及ぼす腸内菌を特定できるかもしれない。このことをアスリートのパフォーマンス向上に直結させるのが目的ではありますが、腸内菌のメカニズムを深く知ることで、一般人の健康維持や病気の治療にも役立つようになっていくはず。ですから今は真摯に取り組む時期と心得て、毎日、腸内菌の解析に没頭しています」

腸内環境分析のカギとなる最新鋭の装置

 解析プロセスの中核を担うのは「Miseq」という最新鋭の装置。世界中でもさほど導入例の多くないこの装置を使って、膨大な計算を要するゲノム解析を進めていく。ヒト一人あたりの腸内菌を解析するのに要する時間は、およそ1~2カ月間。まずは糞便内の腸内細菌からDNAを抽出。遺伝子の分類指標となる領域のみをターゲットとし、濃度を揃えた後、試薬を加え、1本のチューブにしていく。そのチューブをMiseqにかけると腸内菌の遺伝子情報が読み取れる、といった流れだ。

 「その情報を国内外のデータベースに登録されている遺伝子情報と照合していくんです。そこで特定の菌と合致することもあれば、これまでに登録されていない遺伝子情報だったということもある。一度に数百万という遺伝子配列の結果がアウトプットされますし、これらを膨大なデータベースと照合する必要があるので、高性能のマシンが必要になるというわけです。つまり技術が進化すればするほど、腸内菌の全貌に近づいていくと言えるでしょうね」

遺伝子解析プロセスの中核を担うデスクトップ型システム「Miseq」。現在、メタゲノム解析における最高峰のマシンだ
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Next腸内菌の解析が日本のスポーツを進化させる未来