1970年に開催された「日本万国博覧会(EXPO'70)」、通称「大阪万博」は、時代を拓く技術の祭典として、日本を熱狂の渦に巻き込んだ。そして今、2025年に再び大阪で万博を開催する取り組みが始まっている。47年前の万博でどんな最新技術が発表されたか、8年後の万博でどんな先端技術が紹介されるか、検証すれば「社会を変革する技術の急速な進歩にどう対峙すべきか」のヒントが見えてくる。

(資料提供:大阪府)
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現実にはありえない空想の産物たち

 2025年に大阪で万博が開催される――と聞いても、40代までの人は、興味をそそられないかもしれない。しかし、50代、60代は、特別な感慨を持つだろう。「大阪万博」という言葉を耳にするだけで、心を揺さぶられてしまうからだ。

 1970年、大阪府下の千里丘陵約330万平方メートルの会場で、アジアで初めて開催された万国博覧会には、77カ国が参加し、3月14日から9月13日の183日間でおよそ6400万人もの人々が訪れた。

 来場者の度肝を抜いたのは、「人類の進歩と調和」というテーマにそって紹介された「時代を変革する最先端技術」の数々だった。子どもたちにとっては、輝く未来を体験できる“SFの世界”だった。

 ソビエト連邦(現ロシア)のパビリオン「ソ連館」には、ドッキングするソユーズやボストークなどの宇宙船が宙につられていた。アメリカ館ではアポロ11号の着陸船と着陸地「静かな海」が原寸で再現され、アポロ12号が持ち帰った「月の石」が展示された。

 宇宙ステーション内のカラーのライブ映像ですら見られる現在では想像もできないだろうが、当時「宇宙」と言えば、宇宙飛行士が月面を不自然にぴょんぴょん飛び跳ねている粗い白黒映像くらいしか見たことがない人たちにとって、実際に宇宙空間を飛んできた宇宙船や本物の月の石を直に目にするなど、夢のような話だった。

アメリカ館の「月の石」。アポロ計画によって持ち帰られたもので、ひと目見たさに多い時は4~5時間もの待ち行列ができた(資料提供:大阪府)
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 当時、ジャンケンしたり写真をとってくれたりする「ロボット」たちは、アニメでしか見たことがない代物。座っているだけで体を洗ってくれる「人間洗濯機」などは、マンガに描かれた未来の生活用品そのものだった。

 入場者が目にしたのは、現実にはありえない空想の産物の数々だった。だからこそ、最新の“技術”ではなく、引田天功の“奇術”で真っ赤なスポーツカーが空中浮遊するマジックショーも、違和感なく周囲に溶け込んでいた。

 実は、この「現実にはありえない空想の産物」というイメージこそが、1970年と2025年の大阪万博の差異を考える上での重要なキーワードだった。

フジパン・ロボット館の身長2.5mの巨人ロボット。同館にはほかにも、テーマ音楽に合わせて踊る15体の踊り子ロボットや、子どもたちと遊ぶジャンケンロボット、記念撮影をしてくれるロボット・カメラマンなど、たくさんのロボットが登場した(資料提供:大阪府)
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サンヨー館の「人間洗濯機」。現在、介護用として似た仕組みのものが実用化されている(資料提供:大阪府)
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電気事業連合会が出展した電力館、水上劇場での初代・引田天功のイリュージョン・ショー。マツダのコスモスポーツが宙に浮いた!(資料提供:大阪府)
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