デジタルテクノロジーによって、社内外のコラボレーションを進め、イノベーションを実現する――。デジタルビジネスを進めるに当たって、まことしやかに語られることが多い話ですが、実現するのは大変です。
 そもそもの話として、企業規模の大小を問わず、社内の組織というものは「縦割り」になっているのが通例です。そんな縦割りの組織を横断してデジタルビジネスを進めようとしても、社内の連携ができず、頓挫してしまうことが少なくありません。
 どうすればうまく進められるのでしょうか。第1回『変革とかグローバルとか社長が騒ぐので困っています』第2回『何も出てこないのにまたブレストですか』と同様に、製造業に勤める「先輩」と、サービス業に勤める「後輩」の対話を通じ、デジタルビジネスの進め方を考えていきます。

後輩 お忙しいときに呼び出してすみません。

先輩 いや、大丈夫だ。昼飯をご馳走してくれるとメールに書いてあったが、部活の後輩に払わせるわけにはいかない。それは気にしなくていいよ。年末の忘年会の時に言っていた、「岩盤のように動かない役員たち」を説得するやり方についての相談だろう?

後輩 はい。新規事業をやるからと言われて、ITの会社から今の会社へ転職したのですが、なかなか思うように進められません。丸1年たって、提案を経営会議に何度か出しましたが、そこで止まったままです。

(写真:Rawpixel / PIXTA)
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先輩 「経営陣が全員、頭が固い。しかも合議制だからなかなか決まらない」と言っていたな。そもそも自分たちが言い出したわけではなく、社外取締役の「新規事業をつくらないと」という発言がことの発端だそうだから、まあ本気にならないよな。俺も社長から命令されて新規事業推進室次長とかいう辞令を受けたが、「いったい何ごとか」と思ったし。

後輩 いきなりそんなことを言わないで下さいよ。転職してしまった私の身にもなってください。

先輩 自己責任だろう、それは。そんな顔をするな、相談には乗るから。社内の各部門を率いている役員の仲が悪くて、経営会議で何も決められないという問題だったな。

後輩 今一番困っているのはそこです。新規事業の提案に対し、駄目とは言わないのですが、やれとも言わない“宙ぶらりん”の状態が続いています。加えて、段々と分かってきたのですが、役員だけではなくて、部門同士も結構仲が悪いんです。具体的には「営業部門」と「サービス事業部門」です。

先輩 君の会社はサービス業に入るのかな。基礎となる技術があって、サービスといっても人海戦術ではなく設備を使うわけだから、一種の製造業とも言えるね。一件一件、完全個別受注生産で、特定の製品をつくって売っているわけではないけれど。

後輩 ええ。実は小規模ですが研究所も持っています。基礎研究の一つに面白いものがあり、それを使って売れる商品をつくってみようというのが新規事業の一つです。単なるプロダクトアウトではなく、顧客の要望を取り入れて提供することにしています。ここにデジタルテクノロジーを使うわけです。

 研究員は大喜びで「何でも協力する」と言ってくれ、サービス事業部門も「繁忙期でなければやってみてもいい」というところまで来たのですが、営業部門の役員が「そんなものは売れない。うちはお客様からの注文を受けるのが本筋で、こちらから物を売りつけた経験はない」などと言い出しまして・・・。

Next営業と工場の仲が悪いのは「当然」