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地方で働く

越前市と市内企業が連携、「これからの働き方」を考える(3/3)

越前市地方創生 市民・企業向けセミナー「モノづくりのまちの新しい働き方」

採用の現状とUターンの促進

 労働人口の減少が進み、地方都市の働き手不足は深刻化している。参加企業の中では、従業員約500名以下の規模の井上リボン工業、TOP、ふじや食品が、特に採用に苦労しているという。

 ふじや食品の西野氏は、「これまで地元の雇用を守ることを心がけていたが、福井県出身の人材が県内、市内の大企業に就職してしまい、市内の中小企業の採用が苦しい。ぜひ地元の有力企業には他地域からの採用を促進してほしい」と意見を述べた。TOPの山本氏は、「自社での新しい商品や仕事を生み出す技術者、技能者を求めているが、地方の中小企業に飛び込んでくれる人材がなかなかいない。ひとつひとつ実績をつくりながら、今後も採用に力を入れていきたい」と話す。

 一方の大企業側も、県外からの採用には苦労している。従業員約3500人のアイシン・エィ・ダブリュ工業は、中途採用の技能員260人のうち約半数を県外から採用したものの、定期採用した高卒の技能員80人全員が福井県出身者、大卒の事務・技術系は30名の内80%が福井県出身者と、新卒はほぼ県内からの採用だ。

 アイシン・エィ・ダブリュ工業の加藤氏は、採用活動を通して、福井県民は県外の大学に進学しても就職時には地元に戻りたいという志向が強いと感じているが、県外進学者にピンポイントで採用情報を届けることに苦心している。「もし地元の高校からの県外の進学大学や専攻、進学人数のデータを提供してもらうことができれば、より狙いを定め、福井県出身者の進学先に重点を置いた効率的な採用活動ができる。官民協力してUターン者の採用を進められれば理想的だ」と話す。

 福井県は今年8月に、県内出身の入学者数が多い立命館大学、京都産業大学とUターン就職支援協定を結んだ。行政主催の大都市圏での就職説明会や、越前市のまちや企業のPRをするテレビCMなど、官民協働で県外からの採用を増やすための取り組みのアイデアが企業側から示された。

住まいの拡充が大きな鍵

 定住の促進には、職だけでなく魅力的な生活環境も重要だ。福井県は、子どもの学力・体力で全国トップクラスを誇る。さらに越前市は「越前市子ども条例」を定め、さまざまな子育て支援など、日本一の子育て環境を掲げる。そういった高水準の子育て・教育環境がある一方で、近隣市への定住人口の流出という課題を抱えている。各社からは越前市内の住環境の拡充や駅前をはじめとした中心市街地の活性化について意見が出た。

 福井村田製作所は、従業員の半数が越前市内在住、残りの半数は鯖江市、福井市など近隣市内から通勤している。さらに現在200名ほどの県外からの転勤者がいる。越前市の住環境や教育環境に魅力を感じ、家を建てて定住する家族がいる一方で、住まい探しに困ることも多いという。藤田氏は「転勤者を含め近隣の市に住む社員が増えている。町の魅力が増し、住まいの受け皿が充実すれば、定住人口を増やせるのではないか。定住促進を自治体と連携して進めていきたい」と話す。

 井上リボン工業の井上氏は「Iターン者の住まい探しに苦労する。県外から就職する新入社員のひとり暮らしを行政にサポートしてほしい」と話す。

 住・生活環境に関連して、ふじや食品の西野氏からは、市内道路の雪かきや融雪装置設置の拡充という雪国ならではの要望も出た。

女性が戻りたくなるまちに

 女性の活用も喫緊の課題だ。福井県の調査によると、越前市を含む福井県は県外の大学へ進学した女子学生のUターン率が、現在25~29歳の年齢層で17.8%と低調だ。そこで越前市は、「女性が輝くモノづくりのまち」として、女性のUターンを促すための施策や情報発信を強化していく。

 女性の活用について参加企業の実情を見てみると、井上リボン工業は、従業員の半数以上を女性が占める。大卒の開発・営業職として、今年度は3人が入社予定だが、その全員が女性だ。女性が活躍する企業と言えるだろう。

 井上氏は「リボンという社名のイメージもあってか、就職説明会に来る学生のほとんどが女性。以前は男性営業職を採りたいと考えていたが、面接をしているとバイタリティのある女性が多く、むしろ積極的に女性を採用している」と話す。

 社内に女性が多く子育てをしやすい環境になっているため、子どもが3、4人いる女性社員も少なくないという。子どもたちが工場を訪問して親が働いている姿を見学する家族職場見学会など、家族ぐるみの社内イベントを開催しており、両親が社員の子どもが同社に入社するというケースもあるそうだ。

 一方で、新たに女性の活用に取り組み始めたのはアイシン・エィ・ダブリュ工業だ。現在の従業員比率は男性93%、女性7%で、まだまだ男性の職場という印象が否めない。女性専用製造ラインの整備、女性の生産技術エンジニアの育成を今後の目標に掲げている。さらに、ファミリー層の家計を握る女性に訴求するオートマチックトランスミッションを開発すべく、積極的に女性ならではの目線を生かしていく技術、製品開発の環境整備を目指す。

 さらに定年後のシニア層の活用も今後考えていく必要がある。TOPでは、定年後の人材を、若手社員の指導役を兼ねて採用し始めている。山本氏は採用について「技術さえあれば、新卒に限らず女性や高齢者など幅広く採用したいと考えている」と話す。

 セミナーは、市内の企業同士が忌憚ない意見交換をできる場となった。越前市産業環境部長の増田順司氏は、閉会に際して「同じ越前市内の企業でも、お互いのことを知り、意見交換をする機会は少ない。参加者の方には、ぜひ今日のセミナーでの話を持ち帰り、家族や勤め先の方に広めていってほしい」と語った。

飯田彩=編集者・デザインコミュニケーター

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