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池袋、豊島区庁舎移転を機に玉突き再生始まる

「東京大改造マップ2020 最新版」より

宮沢 洋=日経アーキテクチュア【2015.4.27】

国内2位の乗降人数を誇る池袋駅だが、駅の周辺に人が流れないことから“駅袋”とも呼ばれてきた。1978年に完成したサンシャイン60以降、大きな変化のなかった駅周辺が、庁舎移転を契機に変わり始めた。

 池袋駅東口から南東に徒歩8分、住宅街の一角に「としまエコミューゼタウン」(南池袋2丁目A地区再開発)が全貌を現した。

南西から見たとしまエコミューゼタウン。設計は日本設計。隈研吾氏が外観デザインを監修した。上層部の分譲マンション322戸は受付開始から約7週間で完売した(写真:日経アーキテクチュア)
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 地下3階、地上49階。総事業費約428億円。上層階は分譲マンションの「ブリリアタワー池袋」で、その足元にスカートのように広がる低層部(3~9階)に豊島区役所が入る。庁舎は5月7日に供用を開始する。

低層部南側にはグリーンテラスを設けた(写真:日経アーキテクチュア)
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低層部の外装「エコヴェール」のイメージ図(資料:豊島区)
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 「サンシャイン60以来の好機だ」。豊島区都市整備部都市計画課の原島克典課長は、池袋駅周辺整備における新庁舎の意味をそう表現する。

 サンシャイン60は池袋駅から東に約600m、巣鴨拘置所跡地に1978年に完成した地上60階建てのオフィスビル。大規模な商業施設やホテルも併設する。「池袋駅東口を出た人の約8割がサンシャイン方面に向かう」(原島課長)という再開発の成功例だ。しかし、それは人の流れがいまだにサンシャインにしか向かわないことの裏返し。そんな東口の新たな核となることが期待されているのが、としまエコミューゼタウンである。

南から見た池袋駅東口(写真:川澄・小林研二写真事務所)
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 敷地は旧日出小学校跡地一帯で、サンシャインから見ると約400m南西。最寄駅は東京メトロの東池袋駅だが、多くの人は池袋駅からグリーン大通りを歩くと予想されている。

現庁舎跡地開発は東京建物グループに

 グリーン大通りと直交方向、駅から北東へ人を流すことが期待されるのが現庁舎の跡地活用だ。豊島区は現庁舎敷地とその南側にある豊島公会堂(16年2月に閉館予定)の2敷地を対象に、公募型の事業プロポーザルを実施。3月20日、優先交渉権者を東京建物・サンケイビル・鹿島グループに決定したと公表した。公会堂跡地に建設するホール棟は19年3月、庁舎跡地のオフィス・商業棟は20年3月の竣工を目指す。

1961年竣工の豊島区現庁舎の跡地に延べ面積約6万4000m2のオフィス・商業棟(パースの左)、50 年竣工の豊島公会堂跡地にホール棟(パース中央)をそれぞれ建設する。ホールは区と民間の区分所有となる。3月20日、事業者公募の優先交渉権者が東京建物・サンケイビル・鹿島グループに決定した(資料:東京建物)
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ホール棟は19年3月、オフィス・商業棟は20年3月の竣工を目指す。オフィス棟の低層部にはシネマコンプレックスを計画している(資料:東京建物)
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 サンシャイン方面にも新たな魅力が加わる。シネマサンシャインを全国展開する佐々木興業が、東池袋1丁目に新シネマコンプレックスを建設する。地上15階建てで、12のスクリーンを持つ。総客席数約2600席で、「首都圏最大級」をうたう。竣工は17年の予定だ。

東池袋1 丁目新シネマコンプレックスの外観夕景。地下3階・地上15階建て。設計はINA新建築研究所。2017年竣工予定。最上階は高さ18mの巨大スクリーンを持つ次世代「IMAX」となる。総客席数は約2600席。事業主の佐々木興業はサンシャイン60通り沿いでも「シネマサンシャイン」を運営している。現庁舎跡地にも新たなシネマコンプレックスができると、東池袋は“映画の街”となりそうだ(資料:佐々木興業)
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明治通りバイパスで駅前の混雑緩和

 また、サンシャインの南東側隣地にある造幣局が16年に、さいたま新都心(さいたま市)に移転し、跡地が再整備される。3.2ヘクタールある敷地の東側約半分は、防災公園とする。西側半分のうちの約3分の2は教育・研究機関の用地で、残り3分の1は、木造密集地域の建て替えを進めるための種地となる見込みだ。

「東京大改造マップ2020 最新版」に掲載した「池袋」エリアの地図の一部。同書では同エリアのほか、「大手町・日本橋」「銀座・有楽町」「虎ノ門・六本木」「品川」「晴海・豊洲」「有明・辰巳」「渋谷」「新宿・神宮外苑」
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 池袋駅東口は、車の流れも大きく変わる。エコミューゼタウンの東側では明治通りのバイパス(環状5の1号線)が整備中。現在の明治通りは池袋駅東口の目の前を通っているが、19年度完成を目指すこのバイパスは、新庁舎の南側辺りで地下に潜り、目白通りを超えた辺りで地上に出て明治通りと合流する。

としまエコミューゼタウンの東側には明治通りバイパスが整備中。写真の手前辺りで地下に潜る(写真:日経アーキテクチュア)
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 バイパスが完成すると、駅東口の交通量が大きく減る。豊島区はバイパス開通後、駅前の道路を廃止して歩行者広場を整備し、地下通路に光を採り込むサンクンガーデンを設ける構想を持っている 。

豊島区は明治通りのバイパスが開通した後、駅前を歩行者広場にする構想を持っている。現在、駅前を通っている明治通りは広場の南北でUターンする形だ。これは地下に光を入れるサンクンガーデンを設けるため。“ 駅袋”と呼ばれ、駅から外に人が出てこない状況を打開することが狙いだ(資料:豊島区)
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西口の再生もついに始動

 駅をまたいだ西口でも大きなプロジェクトが進み始めた。地権者らで構成する池袋駅西口地区まちづくり協議会は、14年9月に池袋駅西口駅前街区の基本構想案を公表。高層2棟を含む計13万2000m2規模の開発を検討している。西口にも東口と同様にサンクンガーデンを設け、東西の回遊性を高める。

協議会が14年9月に示した池袋駅西口駅前街区の基本構想案。東口と同様にサンクンガーデンを設け、にぎわいを創出する。「新たな取り組みを容積率緩和の対象とするために、都市再生緊急整備地域の指定を国に働きかけていく」(豊島区拠点まちづくり担当課の三沢智法課長)(資料:豊島区)
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 西口駅前には小規模で不整形な敷地が多く、築30年以上の老朽化した建物が9割を占める。好立地を生かし切れていないことに加え、防災上の問題もある。協議会は豊島区が事務局を務め、三菱地所がまちづくり協力者として参加している。完成には10年程度かかるとみられる。

 東西の回遊性を高めるという意味では、西武池袋線東側の西武鉄道旧本社ビル建て替え(19年竣工予定)に伴い、線路をまたいで東西をつなぐ南デッキの建設も現実味を帯びてきた。現在、区と西武鉄道、JR東日本の間で協議が進められている。

池袋駅を東西に行き来するには、現状では地下通路を通るしかなく、災害時の安全性が疑問視されている。線路をまたぐ東西デッキの必要性が以前から指摘されてきたが、西武鉄道旧本社ビルの建て替え(2019 年竣工)に伴い、実現に動く公算が高まってきた(資料:豊島区)
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 池袋駅は新宿駅に次ぐ国内2位の乗降人数を誇りながら、長く“駅袋”と揶揄(やゆ)されてきた。東口の西武百貨店と西口の東武百貨店で消費行動が完結してしまい、駅の外に人が出てこないという意味だ。一方、「住みたい街ランキング」で上位に入ったり、アニメ関連の店舗が急増するなど、街のポテンシャルは高い。

 駅周辺が変わらないことに危機感を持つ豊島区が庁舎移転を機に、再生に本腰を入れ始めた。区がまいた種をきっかけに、民間の開発意欲に火が付くか。まずはエコミューゼタウンのにぎわいが試金石となりそうだ。

表紙

東京大改造マップ2020 最新版
編者:日経アーキテクチュア
「東京大改造マップ2020 最新版」は、4月6日に紙版電子書籍を、4月23日に開発プロジェクトデータ集2015年版を発売した。池袋以外の注目エリアの解説などはそちらをご覧いただきたい。

この記事のURL http://www.nikkeibp.co.jp/ppp/atcl/tk/15/434169/042000007/