• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

トレンド

テナントを悩ます原状回復費の高騰

坪12万円が半分になる減額事例も

写真はイメージです(写真:yayoicho – Fotolia)

 オフィス退去時の原状回復工事費の高騰が、テナントを悩ませている。6月には大型訴訟が勃発した。なかには専門家の力を借りて、大幅減額に成功した事例もある。トラブルで浮かび上がるのはテナントの認識不足と、一部ビルオーナー・工事会社の不十分な対応だ。選ばれるビルづくりに熱心なデベロッパー各社だが、退去するテナントへの対応には課題が残る。

 6月中旬、東京・丸の内の大規模オフィスビルを退去したテナントがビルオーナーを相手取り、敷金の返還を求めて東京地方裁判所に提訴した。原状回復工事費の妥当性を真正面から争う構えだ。

 テナントは新築のスケルトン状態のビルに入居して内装を造作し、退去時には基準階仕様の内装に戻すという契約を交わしていた。賃借面積は約1100坪。原状回復工事費の見積書を出したのは、ビルオーナーが指定したビルオーナーのグループ会社だ。

 当初の見積額は4億3000万円余りで、1坪あたりに換算すると約40万円になる。その後の交渉で坪35万円まで下がったが、それでも納得がいかないと、司法の判断を仰ぐ行動に出た。

移転のブレーキになるケースも


 訴訟に発展するケースは珍しいものの、ここ数年、オフィスの原状回復工事費をめぐるテナント側とビルオーナー側の対立が目立つようになってきた。

 背景にあるのは工事費の高騰だ。国土交通省の調べによると、2015年の事務所ビル(鉄骨鉄筋コンクリート造)新築工事費の平均坪単価は3年前の1.4倍。これに伴って内装工事費も上昇し、特に築浅のSクラス、Aクラスと呼ばれるハイグレードなビルで、上がり方が激しい。

●東京都の事務所ビル(鉄骨鉄筋コンクリート造)の工事単価の推移
(資料:国土交通省「建築着工統計」を基に日経不動産マーケット情報が作成)

 「一般的なオフィスの原状回復は、3年前の1坪あたり6万円~7万円が10万円前後になっている」(大手不動産会社)。「外資系企業の作り込んだ内装は、3年前に坪15万円前後だったものが28万円~30万円に高騰した印象だ」(外資系不動産サービス会社)。工事費はビルや不動産会社、工事会社によって異なり、相場がつかみにくい。

 原状回復工事費の高騰が、移転のブレーキになっているという話も聞いた。東京都内のAクラスビルで約440坪を賃借する外資系テナントは、入居段階で原状回復に坪20万円かかるという見積もりを取得していた。数年後に移転計画が浮上し、新たに見積もりを取ったところ坪45万円と出た。予算を大幅にオーバーしたこともあって、移転を延期した。

 建設需要拡大と職人不足が工事費高騰の根本原因だが、それだけではない。建物の安全や品質を守るために、多くのビルオーナーは工事会社を指定している。これ自体は合理的な制度だが、競争のない環境を与えられた一部の工事会社が、工事費上昇に乗じて市場価格からかけ離れた見積額を提示しているふしがある。特に1社だけが指定されているときに問題になりやすい。

 根拠に乏しい見積もりは、厳しい査定であいまいな部分がそぎ落とされる。ところが大方のテナントには、不動産や工事のプロに対抗するための知識がない。そこでテナントが専門知識を備えた第三者に助けを求め、大幅な減額を実現したケースも公になっている。

Close Up

[PR]

協賛企業・団体