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安田菜津紀の「未来への扉」対談ビジネス

50歳「魂の退社」後に待ち受けていたこと~稲垣えみ子(前編)(4/8ページ)

2016.12.27

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人生の折り返し地点で感じたお金の呪縛

安田 私は高度経済成長時代やバブル時代を知りませんが、時代とともに“幸せの形”が変わってきているように思います。

 東日本大震災以降、被災地の仮設住宅に足を運んでいますが、そこに住むおばちゃんたちは「震災前ってさ、食べ物を買ったことがなかったんだよね」と話してくれました。つまり、“お裾分け文化”、“物々交換文化”が当たり前のように根付いていて、経済の指標が数字やお金でなくても、生活に支障はなかった。

稲垣 あ、それはすごくよくわかります。今の社会では、例えば何か「楽しいこと」をしようと思うと、ほとんどの人がまずはお金のことを考える。予算がいくらだからこんな旅館に泊まれるとか、欲しい洋服が買えるとか。で、お金があればあるほど楽しいことができると、当たり前のようにそう思っている。でもちょっと前まではそうじゃなかったんですよね。おすそ分けが特別なことじゃなくて、お金を使うことの方が「特別なこと」だったんじゃないか。

 でもかくいう私も、40歳になって「お金を使わなくても幸せなライフスタイル」を身につけようと決意するまでは、年々上がる高給をいいことに、洋服や靴や化粧品を買いまくっていたんですけど…(笑)

安田 買い物三昧の稲垣さんって今では想像できないです。それがなぜ今、お金を使わない生活に?

稲垣 私が朝日新聞社に入社した年は、“男女雇用機会均等法元年”です。男女の差別なく入りたい会社に入れて、働いて実力をつければ給料も増えていくと信じることができた最後の「幸福な時代」だったのかもしれません。なので給料が増えることは、それだけ仕事を頑張ったという自分なりのプライドでもありました。自分で稼いだお金で「豊かな暮らし」をするのは、自分にとってのモチベーションであり、ステイタスでもあった。

 それが40歳を迎えた時、人生80年だとすれば折り返し地点にきたと思ったんですね。クレッシェンドとデクレッシェンドの真ん中に立つ今がピークなんだと。これからは少しずつ小さくなっていって、いずれは死を迎えるんだなと。具体的には、いずれ会社の中でのポジションもなくなり、定年退職を迎え、年金暮らしになる。つまりは使えるお金はどんどん減っていく。「お金があればあるほど幸せ」という価値観を持ち続けていたら、これからの人生はどんどん惨めなものになっていくと危機感を抱いたんですね。

 具体的に言えば、昔はもっと高い洋服が買えたとか、もっといいホテルに泊まれたとか、そんなわけのわからない被害者意識を持ち続けて何十年も生き続ける人生は嫌だと思ったわけですよ。だから、お金さえあればハッピーという価値観を、お金がなくてもハッピーだという価値観に変えなきゃと。むしろお金がない方がいいと思える価値観を作らなければいけないとも思いました。

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