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オリックス宮内義彦氏が語る「私の経営論」ビジネス

新規事業の撤退こそ経営者の責任(1/3ページ)

面白いアイデアならまず参入を

2017.01.11

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 「地域に根付いて、社員と共に事業を広げて、会社を長く成長させたい」。こんな思いを持つ経営者や企業幹部は多いでしょう。かねて日本企業には社員やその家族、さらには地域社会を大切にして、短期的な利益よりも長期的な発展を望む姿勢が強くあります。その考えは、「業績が良ければ社長が高額の報酬をもらい、利益が減ったら社員をリストラすればいい」という、いわゆる米国型の経営とは一線を画するものでしょう。

 一方で日本的経営を支持していても、「終身雇用や年功序列を徹底すれば会社はうまく行く」と考える経営者は少ないのではないでしょうか。経済のグローバル化が進み、世界の企業と戦うためには、新たなイノベーションが欠かせません。長期成長には旧来の慣習にこだわらない変革が欠かせないのです。オリックスでの長年の経営から、新たな持続的成長の条件をまとめてみました。そのエッセンスを3回に渡って公開します。

宮内義彦(みやうち・よしひこ)氏。オリックス シニア・チェアマン。1960年8月日綿實業株式会社(現 双日株式会社)入社。64年4月オリエント・リース株式会社(現 オリックス株式会社)入社。70年3月取締役、80年12月代表取締役社長・グループCEO 、2000年4月代表取締役会長・グループCEO 、03年6月取締役兼代表執行役会長・グループCEO、14年6月シニア・チェアマン(現任)。

 「IoT(モノのインターネット化)」や「インダストリー4.0」、あるいは「フィンテック」など産業界を巡って、新しい動きが起きています。

 そうした流れを受けて、新規プロジェクトや事業に乗り出す会社も多いと思います。社員や幹部が熱意を込めて色々な事業案を提出してきた際に、果たしてゴーサインを出すべきかどうか、迷った経験のある経営者は多いのではないでしょうか。

「いつストップをかけるか」が大切

 新規事業への参入は、マネジメント判断が求められる局面ですが、実はゴーサインを出すのは簡単なことです。そして、ここでの大きな失敗はそうはありません。

 判断が難しいのは、むしろ「いつストップをかけるか」という点にあります。ここが人材管理の大切なところです。挑戦しても、すぐに成功する確率はそうは高くないのが現実です。失敗することのほうがはるかに多いと言っても過言ではないでしょう。

 経営幹部は、成否の分かれ目を見極めるのが大切です。どう考えてもうまくいかないと見たら、会社が大きな傷を負う前にストップしなければいけない。逆に、うまく軌道に乗りそうな新規事業にはしっかりとしたサポート体制を整える。これらの判断は、トップでなければできないことが多いのです。

 誰でも担当したプロジェクトは長く続けたいものですし、「今は不振でも将来は大きく羽ばたく」と考えたいものです。それを止めることは、担当者にとって、人生が終わるみたいな気持ちになりがちです。つまり止めることは、大変に勇気がいることなのです。担当者に「こんな面白いこと、よく考えてくれた。ありがとう」と伝えて、うまく次の仕事へとモチベーションを保ってもらうことが重要です。

 撤退の判断こそが経営者の大きな責任であり、参入すべきかどうかは、実はそれに比べると小さな決断なのでしょう。 

 しかし、実際には参入の前にストップをかける例が少なくないようです。始めから参入しない方がリスクを取らず、最も安全だからです。私はむしろもったいないと思います。商機があるのであれば参入して、そこに伴うリスクはうまくコントロールすればいい。多くの社員にとって、チャレンジしているほうが仕事は面白い。「そのうち何とかなる」と信じて、粘っているうちに突破口が開くこともあります。

 もちろん、私自身も進むか引くかの判断で数々の間違いをしました。正直、止めておけばいいものに、ゴーサインを出したこともたくさんあります。

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