トップ > 神野正史のニュースは「世界史」に学べ! > 理解しようとするな受け入れよ! 歴史背景で読み解くオバマ大統領の広島訪問(前編)

神野正史のニュースは「世界史」に学べ!ビジネス

理解しようとするな受け入れよ! 歴史背景で読み解くオバマ大統領の広島訪問(前編)(1/5ページ)

2016.05.18

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アメリカ合衆国大統領として初めて、オバマ大統領が広島を訪問することになりました。これはたいへん意味深いことです。ただ訪問するだけで、べつに謝罪するわけでもあるまい?――という単純な話でもありません。一国の元首が「訪れる」ということには、自動的に“言外の意味”が込められるからです。その点について、2回にわたって米国の歴史的背景を踏まえながら考えていきましょう。まずは前編から……。

大西洋上会談

 さて、A国とB国が話し合いの場を持ちたいと考えたとします。すると、次に問題になるのが「話し合いの場をどこに設定するか」です。A国の首都で話し合うということになれば、B国の首脳が「格下」ということになってしまいますし、その逆もまた然り。この会場設定に手間取り、結局、話し合いの場を持つという話そのものが流れてしまうということすら珍しくありません。

 たとえば、第二次世界大戦中、独ソ開戦が始まったころ、米英の元首が戦後の国際秩序について話し合いの場を持とうとしたことがあります。しかし、先の理由によって、その会場をイギリス国内で設定してもアメリカ国内で設定してもカドが立ちます。

 そうした場合、通常はジュネーヴとかハーグとかオスロとか、中立国や第三国の都市に設定して、両国首脳がそこに詣でる形を取ることが多いのですが、当時は大戦中で、全欧がドイツの支配下か影響下に置かれていたため、それもかないません。

 そこで、アメリカからは「重巡洋艦オーガスタ」を出し、イギリスからは「戦艦プリンスオブウェールズ」を出し、米英の間に広がる大西洋の真ん中で話し合おうということになりました。これがいわゆる「大西洋上会談」です。これなら、両者首脳が対等に出国したことになり、上下関係が生じません。

 ところが今度は、この2隻の船が接舷したとき、問題が発生します。

 英相ウィンストン・チャーチルが下船して重巡洋艦オーガスタに乗り込むのか、米大統領フランクリン・ルーズヴェルトが下船して戦艦プリンスオブウェールズに乗り込むのか。どちらにするかで、またしても上下関係が生まれてしまいます。こうした、はたから見ていると「そんなのどうでもいい!」と思うことに彼らは誇りをかけて執着します。

 そこで妙案。

 まず、両船を接舷する場所を大西洋のド真ん中ではなく、アメリカ寄りのニューファンドランド島沖合の洋上に設定する。その分、チャーチルが遠くまで足を伸ばさなければならないことになりますが、その代わりに、米大統領の方が下船し、戦艦プリンスオブウェールズに会場を設定する。

 こうすることで米英が「対等」ということになり、これでようやく話し合いが始められることになりました。たかが民間でさえ、ひとたび酒宴の席を設ければ、上座だの下座だのとうるさい儀礼が発生しますが、ましてや国家の代表が話し合う「外交」ともなれば、こうした複雑でめんどくさい儀礼や意味が発生します。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ログイン
  • マイフォローとは?
nikkei BPnet 会員サービス
トピックを選ぶ!フォローする 自分のメディアを組み立てる! マイフォロー

ランキング一覧を見る

おすすめ情報【PR】

締切間近のセミナー