女性活躍推進法に基づき、女性の活躍に積極的な企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」制度。清水建設は、その最高位の「三つ星」をスーパーゼネコンとして初めて取得した。長年、男性社会の象徴ともいえる存在だった建設業において発揮される女性ならではの能力や、ダイバーシティ推進の取り組みとその意義について、2016年4月に社長に就任した井上和幸氏に聞いた。(インタビュア-/麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、文=谷口絵美)

2016年新入社員の女性比率は目標を上回り、24%に

――スーパーゼネコン初の「えるぼし」を取得した感想はいかがでしょうか。

井上社長(以下、井上) ざっくばらんに申し上げると、よく頑張ったなと思います。ご承知のように、建設業というのは、かつては男社会。トンネルの中に女性は入ってはいけないなどと言われた時代もありましたし、現場の施工管理は男でないとできないという価値観が長年定着していました。

 しかし、そうした分野でも今は女性がたくさん活躍しています。2016年の4月に入社した新入社員では約24%を女性が占め、目標としていた20%を超えました。外からの認知度もだいぶ上がってきたのかなと思います。

早稲田大学大学院理工学研究科建設工学修了。1981年入社。2013年執行役員 建築事業本部 第二営業本部長。2014年常務執行役員 名古屋支店長。2015年4月 専務執行役員 名古屋支店長。同年6月取締役専務執行役員 名古屋支店長。2016年4月代表取締役社長に就任

 こうした状況は、女性たちを企業活動の原動力を担う一員にしようとしていた第一段階は過ぎ、すでに戦力として組み込まれていることを示しています。そうである以上、彼女たちが働きやすく、なおかつ自分の思いを表現し、価値を見出せるような制度や風土にしなくてはいけません。そういう意味で、多くの基準をクリアして「えるぼし」認定をいただいたことは非常に価値のあることですし、今後当社を希望してくれる女性へのメッセージにもなると思っています。

 女性には妊娠、出産という、どうしても物理的に働けなくなる時期があります。私は「ライフステージの中にそういう時期に当たった時は、何も心配せず出産や育児に専念してもらいたい。ただ、その後はまたきちんと職場に戻って、休んでいた分を取り返すくらいの気持ちで働いてほしい」と女性社員に話しています。

2016年4月に入社した新入社員は約24%を女性が占め、目標としていた20%を超えた。写真は入社式の模様

――社長自身が「女性の力はすごいな」と実感したことはありますか。

井上 今まさに実感しているところです。現場に視察に行くと、建築にしろ土木にしろ、必ず女性社員が出てきます。私も以前、現場で働いていたので分かるのですが、彼女たちは男性と全く変わりなく作業着と安全帯(写真)を身につけ、工事現場の中に入って職人さんに指示を出したりしている。男性の場合、とかく荒っぽかったり、上から目線で話したりする人もいないわけではありませんが、彼女たちは非常に丁寧で礼儀正しい。大したものです。おそらく品質管理や安全管理でも、特に気配り、目配りをして仕事していると思います。

写真が安全帯。高い場所で作業を行う場合に使用する命綱付きベルトのこと

――女性が力を発揮することで、どんなビジネス上のメリットがあるとお考えですか。

井上 例えば、建設現場では、近隣とのお付き合いがすごく大事なんですね。住宅地の中で仕事をするときにはとりわけそうで、騒音や埃も出ますから、日常のコミュニケーションを通じて信頼関係を築かなくてはいけません。夕方5時までに終わらなければいけない作業がどうしても6時や7時までかかってしまうというとき、近隣の方との関係が良好だと「いいですよ」と言っていただけますが、そうでないと理解が得られず苦労する。その点、女性が現場にいると非常にスムーズに運びます。いかつい男ばかりが働くいわゆる「3Kの職場」と見られがちなイメージも、女性が生き生きと働くことで払拭されるし、住民の方からも声がかけやすくなる。企業活動に大きなメリットを生んでいると思います。

 例えば、装備面でも、女性向けにより軽い安全帯をと工夫した結果、使いやすく男性も使用するようになりました。男女関係なくみんなにとっていいものができたということですね。こういうことはこれからも出てくるでしょうね。