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麓幸子の「ダイバーシティ&働き方改革最前線」ビジネス

ダイバーシティ経営に不可欠な「働き方改革」「生活改革」(3/3ページ)

日経BPダイバーシティトップセミナーより

2016.10.19

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時間制約を前提にすることでイノベーションも生まれる

 また、若手社員に対し、“まだ若いのだから長時間働くことで貢献を”“若いうちは苦労すべき”という風潮も根強い。その考えがすべて間違いだとはいわないが、“苦労のさせ方”は、今の時代に合わせたものに変えていくべきとだと、佐藤教授は忠告する。

 ワーク・ワーク社員が多かった時には、上司は部下に“終わるまでやれ”と命じた。その結果、労働時間が長く、生産性が低い国になってしまった。しかし、時間制限を抱えた社員が増えた今、こうした状況を変えないといけない。

「これまで日本は、所定労働時間内で仕事をすることを教えてこなかった。ですから私は、むしろ新入社員には1年間残業禁止にし、決められた時間内でしっかりと仕事をすることを学ばせるほうがよいのではないかと思うのです」

 今まで日本企業が気付かずにいた「社員の時間」という制約条件に直面した今、これからの働き方改革において重要なカギになるのは“時間は有限である”という意識を持ち、そのなかで最大のアウトプットを出すことだ。

 しかし、こうした状況はチャンスだと佐藤教授は話す。人間は、制約条件があることで工夫を重ね、それを克服しようと考えるからだ。

「日本企業は、環境やエネルギーの面で、これまで様々な制約条件に直面しながらブレイクスルーし、成長を遂げてきました。仕事も同様で、制限があることで、優先順位を徹底したり、過剰な仕事を見直したり、情報共有の仕組みなどを本気で考えるようになる。生産性向上の余地があり、イノベーションを起こす可能性を秘めているのです」

会社にとって望ましい新たな社員像を示そう

 だが、育児や介護など働き方を変えざるを得ない社員でない場合、「自分には関係ない」という人に、どうすればワーク・ライフ社員になってもらえるのか。

 そのためには、「会社にとって望ましいとされる社員像」を変え、示すことだと佐藤教授。仕事以外の生活も大切にする社員が、会社にとって望ましく、よい仕事ができるというメッセージを発していく。

「企業による働き方改革を進めると同時に、そこで働く人々が、仕事だけでなく、それ以外の生活も大事にするという『生活改革』を同時に進めることが大切です」

 最後に佐藤教授は、女性活躍の場の拡大のために、男性の育児参加の必要性を説いた。

 短時間勤務を利用している女性の夫は、勤務時間が長い傾向があるという。これでは“仕事も育児も女性がする”といった働き方が固定されてしまうと佐藤教授は危惧する。また、女性社員の夫の子育て参加にも取り組むべきだとして、2つの事柄を提案した。

「女性社員が育休から復帰するときに、本人と人事、上司で三者面談をするケースは多いが、そこに夫も呼んで、『四者面談』を行い、両立について話し合う。もうひとつが、“お手紙作戦”です。女性社員が復帰した際、配偶者の会社の上司宛に、女性社員の会社の社長名でサポートを要請する手紙を出すのです。こうした取り組みをぜひやっていただければと思います」

講演後の質疑応答の模様。「社員の付加価値生産性を測るには?」「育児は女性の役割と思っている会社のトップにどのようにアプローチしたらよいか?」など質問が相次いだ
<最後に>
5月のセミナーに続く佐藤博樹教授の登壇だ。今回、佐藤教授で一番印象に残っているのは、「『所定労働時間内で働く』ということを日本は一度も教えてこなかった」という言葉だ。これまでは、残業ありきで、長時間働いて成果を出す人を評価してきた日本の企業。しかし、もうそれを転換させるべき時が来ているということだ。
「今後は、時間内に質の高い仕事することが大事になる。労働生産性が重要です」。従業員の評価そのものも見直すタイミングが到来しているのである。
佐藤教授は、その企業が望ましいとする社員像の転換が鍵とも指摘する。先駆的な企業は、佐藤教授がいうように、生産性高く働き、仕事以外の生活も大切にする人を望ましい社員像と定義を始めている思う。このところ増えている、「男性育休取得100%」を目標の企業やイクボス宣言をする企業などはそれにあたるのだろう。あなたの会社ではいかがだろうか。(麓幸子=日経BPヒット総合研究所長)
『女性活躍の教科書』

女性活躍推進法や女性活躍推進のために企業がすべきことをわかりやすく解説。2015年版「日経WOMAN女性が活躍する会社ベスト100」の各業界トップの20社の戦略と詳細な人事施策も紹介している

著者 : 麓幸子、日経ヒット総合研究所編
出版 : 日経BP社
価格 : 1,728円 (税込み)

麓 幸子(ふもと・さちこ)
日経BP社 執行役員
麓 幸子(ふもと・さちこ)

1984年筑波大学卒業。同年日経BP社入社。88年日経ウーマンの創刊メンバーとなる。2006年日経ウーマン編集長。12年ビズライフ局長。日経ウーマン、日経ヘルスなど3媒体の発行人となる。14年日経BPヒット総合研究所長・執行役員。15年日経BP総合研究所副所長。2014年法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。内閣府、林野庁、経団連・21世紀政策研究所研究委員などを歴任。筑波大学非常勤講師。一男一女の母。著書等に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。

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