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麓幸子の「ダイバーシティ&働き方改革最前線」ビジネス

異質同士が意見をぶつけ議論していくプロセスこそ企業を強くする(1/2ページ)

ファイザー 代表取締役社長 梅田一郎氏

2016.10.05

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 女性役員比率は25%――日本の会社より女性活躍が進んでいると言われる外資系企業でもファイザーのこの数字は目立つ。梅田社長は、女性の力は会社にとって絶対に必要で、そこからイノベーティブな発想も生まれるという。働き方改革を進め、かつて課題だった女性MRの定着にも効果を見せる。(インタビュアー麓幸子=日経BPヒット総合研究所長・執行役員、文=西尾英子)

女性の“真っ直ぐさ”がイノベーティブな発想を生む

――ファイザーは、役員の女性比率が25%と高く、早くから女性活躍推進に取り組んできた企業ですが、梅田社長自身が女性の力を実感された出来事があれば教えてください。

梅田一郎社長(以下、梅田) これまで何度もそうした思いを実感し、刺激を受けています。男性はやはり縦社会ですから、意見が割れても最終的には上司の意を汲むケースが時にあると思います。しかし、物事を真っ直ぐ論理的にとらえ、納得出来ないものに対しては時に首を縦に振らない女性には、力強さを感じます。そうした粘り強さが、新たな展開を生んだケースもありました。

 我々は外資系企業なので、予算案の作成には非常に気を揉みます。本国からの要求に対し、信頼関係を維持しつつ、議論を重ねていく。その過程でつい本国の要求に負けて、最終的にストレッチした目標に合意をしてしまうようなケースもありました。でもある日の会議で女性部下が、「梅田さん、どうしてそんな要求を飲むんですか?」と質問してきました。この社員は非常に優秀で私とは度々議論を交わすのですが、このケースでも非常に論理立った考え方に基づいて質問をしてくれました。そこで彼女にある事業の提案をしたところ、「でもそのためには投資が必要ですよね? それならその事業にこれだけの予算を使わせてください!」と言う。その議論を親会社に伝えたところ、納得してくれました。

岡山大学卒業。慶応義塾大学大学院経営管理研究科卒業(MBA取得)。1980年台糖ファイザー(現ファイザー)入社。2001年政策情報・企画調査統括部長。05年取締役 経営企画担当。06年同 人事・総務担当。07年同 医薬営業担当。09年常務執行役員 プライマリー・ケア事業部門長。同年代表取締役社長 兼 プライマリー事業部門長。16年同代表取締役社長 兼 イノベーティブヘルス事業部門 /インターナルメディスン部門長

――大胆な切り返しで新たな展開につながったということですか。

梅田 我々がこれまで親会社からの要求を唯々諾々と受けてきたなかで、彼女はそれを受け止めた上で次の展開につなげたわけです。こうした行動は、皆のモチベーションにもなりますよね。“あ・うんの呼吸”で互いの意思を汲んでばかりいると、スムーズに進む半面、選択肢を狭めてしまう。語弊があるかもしれませんが、こうした女性の“真っ直ぐさ”に、少々面食らうこともある。しかし、このように問題提起をしてもらい、いろいろと議論を交わして様々な可能性を検討することが、会社経営には非常に重要だと私は思っています。そこから学ぶことは本当に多いですし、企業が成長する上で欠かせないものです。男女のこうした違いを生かすことこそ、ダイバーシティそのもの。ですから、女性の力は会社にとっても、そして私にとっても、絶対に必要なものなんです。

――そこからイノベーティブな発想も生まれてくると。

梅田 その通りです。我々は医療用の医薬品を扱う製薬会社ですから、開発には10年、15年かかります。急にマネジメントを変えたら売れたとか、ヒットするようなものではありません。そうした中で、いかに企業力を強化していくか。それは、やはり圧倒的に「人の力」が大きいんですね。ファイザーでは、「人材」を表わす時は「人財」という言葉を使いますが、まさに社員は会社にとって財産なんです。よく製薬会社の社長が退職する時に、「在任中にこの製品を成功させて~」などと言いますが、たまたま在任中に出た商品が売れたという幸運に恵まれることもあると思います。社長が出来る事というのは、人を育て、包括し、強い企業をつくること。そのためにダイバーシティは欠かせない経営戦略です。

――ダイバーシティを実現するには、働き方改革が必須です。政府もこの9月から働き方改革実現に向けて加速度的に取り組みを進めています。担当大臣も誕生しました。しかし、ファイザーはすでに2007年から働き方改革に着手していますね。

梅田 母親である女性が早く帰れれば働きやすくなると、時短勤務や育休など様々な制度を導入してきたけれど、その一方で、父親である男性たちは遅くまで残業している。これでは意味がありません。両方の働き方を変えないと根本的な解決になりません。とはいえ、やはり女性のことを意識して進めていかないとダイバーシティは進まないという現実があります。アメリカで弊社の臨床開発を行っている会社のシニア・バイス・プレジデントに、「女性をプロモーションしようというと、女性側が嫌がるという話もある」と言ったところ、「研究者の世界でも、開発の意志決定層で女性はほとんどいない。アメリカでさえこうした現状なんだ」と。外国にいる他の女性役員も、目標を掲げ、様々なアプローチをしていかないと、女性活躍は実現しないと言っていましたが、その通りだと思いますね。

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