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AIの目に「駒が光る」日は来るか(5/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.6

2016.11.28

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羽生善治の将棋はAIで再現できるか

――現在、芸術の世界をみれば、AIは、レンブラント風の絵画を描き、バッハ風の音楽を作曲できるようになりました。また、小説の世界でも、AIの書いた作品は「星新一賞」の一次選考をパスするレベルにまで到達しています。このようなAIの飛躍的な進歩を考えると「羽生善治の将棋」を再現できるAIも、もしかしたら、できるのでしょうか。そうなれば、棋士を目指す未来の子どもたちが「羽生さんとやりたい!」と熱望したとき、「じゃあ、AIで羽生将棋を体験させてあげよう」ということも夢ではなくなると思うのですが。

羽生:ある程度のデータがあれば、それ用のプログラムはつくることができるんですよね?

中島:まあ、羽生さんの棋譜を全部、データに入れればいいんだけれど、私たち研究者がやりたいのは、羽生さんの生涯をすべてデータとして入力して……。

――「羽生さんなら、こう考えるだろう」っていう将棋のソフトをAIでつくれるんですか?

中島:さすがに、羽生さんの人生観まではデータに入れられないでしょうけど(笑)。

――人生観は無理でも、先ほど、お二人が話されていたように「この指し手が美しい」という美的感覚も含めた「AI 羽生善治」の将棋ソフトは、いちファンとして、ぜひ、実現してほしいと思うのですが。

羽生:まあ、それをいっぱい普及されても、なんだか……将来、スマホで対局されていたりしても……(笑)。

――そろそろ、この対談も終わりの時間が迫ってきました。最後に、今回、対談されたご感想をお伺いしたいのですが、羽生さんは、いかがでしたか?

羽生:中島先生と本当にゆっくりお話しできたのは、今回が初めてでしたので、非常に刺激を受けたというか、勉強になりました。

――中島先生は、どのようなご感想をお持ちになられましたか。

中島:僕は、羽生さんの「将棋の強さ」よりも、羽生さんの「棋士としての人生観」がすごいと思いました。以前、はこだて未来大で講演いただいた時に一番感心したのは、羽生さんが、勝つことよりも、学ぶことを優先しているところ。本番の対局であっても、自分が不利な状況を試したいとか。その場の勝ちよりも、将来の上達を優先している。そういう考え方は、コンピュータには入れようがないですね。

――残念ですが、時間になりました。本日は、ありがとうございました。

羽生:ありがとうございました。

中島:ありがとうございました。

【次回予告】
 “史上最強の棋士”とも賞賛され、将棋の枠を超えた“知の探求者”としても注目を集める羽生善治氏とAI研究のパイオニアである中島氏とが語り合った今回の対談では、AIによって変化する将棋界に対しての考察や、近い将来、AIが社会にどのような役割を果たせるか、といった内容だけでなく、「知能とは何か」という根本的なテーマを掘り下げる意義深い対談となりました。

 次回は、電王戦、叡王戦を主催するドワンゴの会長でもあるカドカワの川上量生社長をゲストにお迎えします。

 第3回となる対談では、2014年11月に「ドワンゴ人工知能研究所」を発足させ、2016年06月には、人工知能関連領域の研究者を育成するために東京大学に設置された「先端人工知能学教育寄付講座」を支援するなど、実業家として日本のAIの進歩に尽力されている川上氏と、同講座の特任教授も務めるAI開発の第一人者である中島氏が、AIが社会に与えるインパクトや、ビジネスの観点からみたディープラーニングの可能性について、熱い議論を戦わせます。ご期待ください。

中島 秀之(なかしま・ひでゆき)
中島 秀之(なかしま・ひでゆき)

東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。

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