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AIの目に「駒が光る」日は来るか(4/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.6

2016.11.28

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チェスや囲碁と将棋はちがう

――では、AIが出した答えの通りにさせば、誰でも強くなれるということでしょうか。

羽生:それは……なんていうか……将棋は典型的にそうですけれど、相手は必ずしもコンピュータのプログラムと同じように指してくれるわけでありません。コンピュータのソフトから答えだけもらっても、「すかされる」というか、コンピュータのソフトとちがう手がきたら、もう、いきなり対応できなくなってしまうことになります。ですから、ソフトの答えをもらったとき、ちゃんとそれを理解して上達していくっていうプロセスまできちんと結びつけなければならないので、そこをどうするかっていうのは、これからの課題としてあるのかなと思います。

――ある本のなかで、羽生さんは「実際の対局の場でAIは使えないから、コンピュータのソフトが出した答えを鵜呑みにして、自分自身が強くなることにつなげていなければ、かえってマイナスの結果を生む可能性は考えられる」という主旨のお話をされておられました。それはつまり「AIに頼ることにも大きなリスクがともなう」ということでしょうか。

羽生:まあ、そうですね……ただ、少なくとも、コンピュータのソフトを研究に活用することは、一つの時代の流れと言えるでしょうね。

――では、1997年に当時のチェスの世界チャンピオンがIBM製のスーパーコンピュータ「ディープ・ブルー」に負けて、今年の春、囲碁の欧州チャンピオンがGoogleのAI「アルファ碁」に負けたように、将棋でも、トップ棋士が近いうちにAIに負けてしまうのは、必然ということなのでしょうか。

羽生:将棋に関して言うと、チェスや囲碁とは、ちょっとちがう歴史があるんです。

――どのようなちがいですか。

羽生:チェスも、囲碁も、ハードの力とデータの力に重きを置いて、大資本の企業がコンピュータのソフトを開発して強くしてきたという背景があります。一方、将棋の場合は、幸か不幸か、これまで専門のコンピュータのソフトの開発に巨大資本が入ってこなかった。プログラマーの人たちが個人で一生懸命がんばって、細かい評価のところを修正したり、あるソフトのケースではプログラムをオープンにするなどして、進化させてきました。そういう意味では、極めて“ガラパゴス的な進化”を遂げてきたと思っています。また、探索部分はStockfishというチェスのオープンソースを使っているプログラムが多いです。

――大企業が莫大な資金を投入してソフト開発が行われたチェスや囲碁と、個人の志で開発された将棋では、条件がちがう?

羽生:たとえば、チェスの例で言うと、今では800万局くらいのデータベースがあります。それほど多くのデータベースがあれば、コンピュータが序盤で不利になることは、ほぼ、ありません。要するに、考えなくてもデータベースにそって確率的に手を選んでいけば、それほど不利になることは、まず、ないのです。

――そうなんですか。

羽生:あと、チェスの場合、残り7枚のエンドゲームのデータベースは、もうすでにオートマチックにできているので、7枚の局面になれば、人間でもコンピュータでも、考えなくても、常に100%で指せる。ですから、800万局のデータベースと最後の7枚のデータベースがあるだけで、コンピュータは「グランドマスター」くらいの実力をすでに持っているうえに、さらに飛び抜けた計算能力も持っているので、とんでもない実力のものが現れている……そういう現状と比較したら、将棋の場合は、コンピュータのソフトにとって、まだ難しいところがあると思っています。

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