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AIの目に「駒が光る」日は来るか(2/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.6

2016.11.28

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棋士はAIの指し手を理解できるか

――AIを人間の知能に近づけるためには、ディープラーニングだけでは足りなくて、以前から進歩させてきた「演繹推論型のプログラム」が不可欠ということでしょうか?

中島:ある局面ではディープラーニングを使い、別の局面では演繹推論を使う……というふうに組み合わせていくイメージです。

羽生:ディープラーニングで猫を認識させるときに、膨大な数の画像を見せて学習させるそうですが、その延長線上で、現実世界で起こっている森羅万象の情景や事象をディープラーニングで学習させていくことによって、さまざまなことに対して、柔軟性をもって、臨機応変に対応できるようにAIを進歩させるのは、難しいのでしょうか。

中島:現状のままでは、難しいと思います。「猫の見かけに共通する特徴を覚える」というやり方ではなく、たとえば、パズルでもテストでも、なんでもいいんですけど、問題とその解法例を3000個とか3億個とか集めて、「問題を解く」ということに対して学習できるようになると、少しはちがうかもしれません。

羽生:それを実現するためには、人間の認識そのものの仕組みというか、人間の知能の全体像が見えてこないと、AIに教えようがないという面もあるのですか。

中島:そういう面はあります。今はまだ見えていないというのが、正直なところです。

羽生:人間の脳を解明する必要があるのかもしれません。

中島:世の中の人は「AIが人間よりも賢くなってしまったら、何が起こるかわからない」って、むやみに心配したり悲しんだりしていますけど、当分、そんな状況にはならないと思います。

羽生:当分っていうのは、どれくらいの時間ですか?

中島:そうですね……短めに見積もって、あと10年くらいでしょうか。進歩に要する時間は、どんどん短くなっていますから。

――羽生さんは、あるインタビュー記事のなかで、コンピュータの指し手から何かを学ぼうとしても、そのプロセスがわからないことが障壁になっているという意味の発言をされておられました。将棋の場合、結論に至るまでのプロセスというのは、やはり、相当に重要なものなのでしょうか。

羽生:機械学習でも、ディープラーニングでも、どちらでもいいんですけど、コンピュータが、ずっと学習してきたとしますよね。それが何層にも何層にもなっていったら、たくさんのプロセスがあるじゃないですか。そのプロセスを追いかけていこうとしたとき、その距離が短かければ、入力のところと出力のところをみて「ああ、こういうことが起こって、ここにきたんだな」ということがわかります。けれど、層が深くなると何が起こってそうなったかが人間には見えなくなるのです。

――そうですね。

羽生:だから、そこは想像力を駆使して……というか、本当に、想像するしかないわけです。ですから、そのプロセスがあまりにも長いと、理解することができないのです。

羽生善治(はぶ・よしはる):将棋棋士。2016年10月18日現在、王位・王座・棋聖の3冠。1970年、埼玉県生まれ。
小学校1年生のとき、同級生から将棋の駒の動かし方を教わって将棋を始める。1982年、奨励会入会試験に合格。1985年、四段に昇段してプロに昇格。史上3人目の中学生棋士となる。
1996年2月、将棋界で初の7タイトル独占を達成。現在、全7タイトルのうち竜王を除く6つでの永世称号の資格を保持。さらに名誉NHK杯選手権者の称号を保持し、7つの永世称号の保持は史上初。

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