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「知能」とは何か、AIはどこまで近づけるのか(5/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.5

2016.11.21

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AIの進歩で人間の知能や身体性も進化するか

羽生:もう1つ、「人間の知能って何だろう」と考えるとき、興味深い話があります。たとえば、今、多くの人がスマホを持っていますよね。スマホを持っているということは、その知能を「外付けで持っている」ということじゃないですか。それが外なのか内なのかは別にして、人間が四六時中、IQで言えば500でも1000でも3000でもいいんですけど、そう知能を携帯できる道具が技術的に出てきたら、やっぱり、手に取りますよね。手にとって、理解できたら、IQ100の人間にも「IQ1000って、こういうことだったのか!」って、やっと腑に落ちるわけです(笑)。

中島:AIが進歩すれば、特定の分野での知能は、ずば抜けて高くなるでしょうね。今だって、人間よりもAIの方が計算能力は早いですし。そういうピンポイントの分野が、これから、どんどん増えてくると思います。ただ、ピンポイントではなくトータルでというか、「知能を持った個体像」と言えるものは、まだ、ありません。そこには、しばらく到達しない気がします。

羽生:そういうものですか。

中島:「これは人間よりもAIの方が優れている」「この分野はAIが人間を超えられる」という具合に、項目ごとには、どんどん増えて行く気がしています。それは「人間より自動車の方が速い」というのと同じです。

羽生:車のように走れるかどうかはべつにしても、技術の進歩で身体性を高めるようになってくると「ボルトのように走れる」とかって、実現しないでしょうか。

中島:オリンピックの記録もどんどん短くなってきていますからね。

羽生:テクノロジーと同じように進んでいるかどうかはわからないですけど、人間の能力だったり、知能とかも、同じように上がっているということは、言えるんじゃないでしょうか。

中島:少なくとも、知識に関しては、言えると思います。

羽生:今までの蓄積があって、AIの知識のレベルはここまで来ているわけですから、そこで比較してしまうと、AIの方が人間よりも能力が高いと言えるでしょうけど、一方で、人間の方も能力を上げているのは、間違いないという気がします。

中島:昔から「人間は知識が増えると、だんだん判断が早くなる」と言われています。ところが、コンピュータのプログラムは、データが増えると、どんどん遅くなる。ですから、「データや計算式が増えたから、早く判断できるようになる」という技術が実現しないと、AIがさらに進歩していくのは難しいという気がするんです。

羽生:その点について、コンピュータは、ハードの計算能力の速さで、ずっとカバーしてきたわけですね。

中島:今は、そういうことです。グーグルも、計算機がいっぱいつながるから、あれだけの検索ができているわけですけど、本質的な解にはなっていない。

羽生:なるほど、そういうことなんですね。

【次回予告】
 「知能とは何か?」「AIの進歩で人間の知能や身体性も進化する可能性は?」という大きなテーマを論じた中島氏と羽生氏の対談は、次の最終回、AIが進化を続けるために必要な方向性や、AIと棋士が対決する「叡王戦」についての羽生氏の考え方など、刺激的な議論へと発展することになります。

中島 秀之(なかしま・ひでゆき)
中島 秀之(なかしま・ひでゆき)

東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。

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