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「知能」とは何か、AIはどこまで近づけるのか(4/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.5

2016.11.21

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AIの登場で「知能」の解明が始まった

――羽生さんは近年、将棋の世界の枠を超え、今年春に出演されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」でも、“知の探求者”として、AIの現状について取材されました。また、中島先生は、著書『知能の物語』でも、AIだけでなく、人間の知能全般の解明に取り組んでおられます。ちなみに、この本の帯の推奨文は羽生さんがお書きになっていらっしゃいますね。そんなおふたりは、そもそも“知能”をどのようなものと考えておられるのでしょうか。

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『知能の物語』
中島秀之 著、公立はこだて未来大学出版会 発行、近代科学社(発売元)、2015年5月発売。

 日本の人工知能研究のパイオニアである中島秀之氏が、人工知能の発展の歴史をわかりやすく解説しながら、具体的な事例を通して、知能や認知科学についての思索を深めてゆく知的エンターテインメント。AI研究の参考書としてだけでなく、帯に書かれた羽生善治氏の「この本には知能の夢が壮大に描かれています」という言葉の通り、一般読者にも「知能とは何なのか?」という大いなる謎を解き明かす上質なミステリーとしても楽しめる一冊。

羽生:「どのように」というのは?

――たとえば、羽生さんが知能というものに興味を持たれたきっかけは、何なのでしょうか。

羽生:それは、やっぱり、それこそAIがすごく進歩して、「人間と同等か、それ以上のことができる」とか「いや、これはAIにはできないんじゃないか」とか、いろんな話が出てきたとき、「知能の定義って何なんだろう?」ということに、どうしてもなりますよね。

――はい。そうなってきますね。

羽生:今までの長い歴史の中では「高い知能を持っているのは人間だけ」ということでやってきたんだけど、その前提が崩れるかもしれないということになると、「では、そこで議論されている“知能”というのは、いったいどういうものなのか」と改めて考える必要があります。ただ、それは何なのかと問われると、結局、わからないっていうことにたどりついてしまうんです。

――ええ。

羽生:人間って、実現できるんだけど説明できないとか、実際に思っていることや感じていることでも、すべてを言葉で表現することはできないので、「利用はするけれど、本当のところは、どうなっているのかわからない」ということが多いように思います。

――なるほど。

羽生:ただ、AIが出てきたということは、人間の知能と対比するものが出てきたことになりますから、「人間の知能はこういうものだ」ということを浮き彫りにする可能性はあるのかな、という気がします。

――AIという比較対象を得たことで、人間の知能の本質にアプローチできる可能性が出てきたわけですね。

羽生:今までは比較するものがなかったから、これまでは「とりあえず、知能とは何かについては、置いておくか」という話で済んでいたと思うんですけど、AIが出てきて、知能とAIを比較することで、「ああ、知能というのは、こういうものだったのか」と考えられるようになってきた。そういうアプローチでAIをつくっている人たちも、いるんじゃないでしょうか。

――知能の探求のために、AIを道具として利用するということですか?

羽生:「人間の知能が何なのかという探究を極めていけば、人間の知能と同じようなものがつくれるようになるはずだ」というアプローチで研究している人たちも、実際には、かなりいるのかな、と思っているのですが……。

中島:ええ、羽生さんのおっしゃる通り、そういうAI研究者も多いと思いますよ。私のまわりにいるのは、大概、そういう研究者たちですから。どちらかというと、もともと知能に興味があって、「AIをつくる方」っていうか、「AIに仕事させる方」には、あまり興味を持っていない研究者も少なくありません。

――そう考えると、1つ、疑問が湧いてきます。人間の知能の探究を目的として、AIの研究開発に取り組んでいる研究者が多いのであれば、これだけAIの研究が進んでいるにもかかわらず、なぜ、「知能とは、こういうものだ」という明確な答えが、まだ誰からも提示されていないのでしょうか。前回の中島先生と松原先生の対談の最後でも、おふたりとも「AIの研究が進めば進むほど、知能とは何か、わからなくなった」という主旨の発言をされておられましたが。

羽生:今の人間のIQの平均値が100くらいだと仮定した場合、将来、人工知能のIQが3000とか10000になると言われています。そうなると、ここで話している「知能」って、いったい何なんだっていう話になってしまいます(笑)。

中島:本当に、そうですね(笑)。

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