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羽生善治三冠、AIの進歩と実用化を阻害するものとは(3/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.4

2016.11.14

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欧米の方が「不気味の谷」は深い

――AIが「生存とは何か」を考えるという話では、前回、中島先生と松原先生の対談に出てきた小説『未来の二つの顔』でも、主要なテーマになっていましたね。

中島:『未来の二つの顔』は、AIの学習するプログラムの話がメインに入っているJ・P・ホーガンのSF作品で、AIの大御所マーヴィン・ミンスキーがアドバイザーを務めているんです。

羽生:そうなんですか。

中島:この物語は、地球のコンピュータ・ネットワークの管理のすべてをAIに任せてもいいか、不安に感じた為政者と研究者たちが、地球の代わりとなる衛星を打ち上げて、そのなかでAIがどこまで自律的な進歩を遂げるか、実験するという設定なんです。人間は、衛星を統御するAIを故意に暴走させるために、そのAIのプログラムを一生懸命攻撃するんです。電源を切ろうとしたり、さまざまな妨害工作を行って、それでも、AIが人間に反逆しないかっていうのを調べるという設定なんですけど、当然、AIは暴走し始めるわけです。

羽生:それはそうなりそうですね。

中島:AIにとってみると、人間、つまり、モニター映像に映っているちっちゃな粒のような“影”が攻撃してくるんです。あるとき、AIは理解するんですね。「こいつらを排除すればいいんだ」って。それで、いろいろなかたちで人間を攻撃しているうちに、AIが「この“影”も、実は自分と同じような存在ではないのか」って、学習して気づくというストーリーなんです。

羽生:哲学的な話に思えます。

中島:この物語のなかで「学習をすれば、自分の経験の一般化が起こるから、ある程度のインテリジェンスを持った存在であるAIなら、相手である人間の存在も、自分と同等のものとして認めるだろう」というのが、ミンスキーのテーマなんです。

羽生:最近の映画で『トランセンデンス』というのがありました。あの映画も、どこか、その物語に似ていますね。科学者がAIにアップロードされて、いろいろなことが起こる話ですが、あの物語の中でも、ロボットの世界で言われている「不気味の谷」と同様に、ロボットがあまりに人に似通ってくると、逆に、人間は恐怖を感じてしまうところがあるので、AIでも、自分と同じようなものが現れてきたときには、その最初のところの抵抗感というのがあるのでしょうか。

不気味の谷現象(uncanny valley)
1970年、ロボット工学の研究者である東京工業大学名誉教授の森政弘氏によって提唱された。ロボットの外観や動作がより人間に近くなるにつれて、ある程度までは人間に好感や共感を持たれるが、ある時点からは、唐突に、その感覚が強い嫌悪感に変わるという説。

中島:あるかもしれません。

羽生:しかし、逆に、今の日本のロボットの開発手法が典型的にそうなんですけど、最初のうちは人の形に近いロボットの方が、安心できる、気持ちが安らぐという局面もあるので、人に似せるという道筋もあるような気がします。

中島:ただ、人の形に似ていると安らぐっていうのは、日本人だけみたいですよ。

羽生:そうなんですか?

中島:ヨーロッパの人は、とてもいやがりますよね。

羽生:つるっとしている能面みたいなロボットの方がいいんですか?

中島:ええ、機械っぽい方がいいみたいです。

羽生:機械っぽい? ターミネーターみたいな?

中島:この前、介護ロボットの研究開発のプロポーザルを日本とヨーロッパの両方で議論する会議に参加したのですが、どのプロポーザルを採用しようかと話しているときに、ヨーロッパでは「ロボットに家の中に入ってほしくない」という感情が、すごく強かったんです。

羽生:それは意外な結果ですね。

中島:日本は、ロボットが人間に似ていても、結構、平気でしょ?

羽生:そうですね。

中島:平たく言えば、日本のロボットに対するイメージは『鉄腕アトム』で、向こうのイメージは『ターミネーター』なんですよ。

羽生:それ、イメージがかなり変わるはずです。

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