介護されるならAIの方がいい

羽生:これからの日本には、超高齢化社会によって、さまざまな課題が出てくると思います。たとえば、介護問題の解決策の1つとして、ロボットに介護を手伝ってもらうとき、そのロボットには、思いやりや優しさを持たせることもできるでしょう。ただ逆に、介護ロボットには、感情や気持ちを持たさない方が、介護される側にとっては、むしろ、いいんじゃないかと思ったりもするのですが……。

中島:介護の場合を考えると、たぶん、感情移入できる相手じゃ、イヤなんですよ。たとえば、よく聞くのが「人間に下(しも)の世話をしてもらいたくないけど、ロボットならいい」という意見です。でも、ロボットが可愛くなっちゃうと「おまえには下の世話をしてもらいたくない」となる。

羽生:そうなると、一日ごとに変装してくるとか、感情移入させない工夫をする必要が出てくるかもしれないですね(笑)。

中島:仮に、人間の感情や気持ちがわかっていても、故意に表に出さない「能面ヅラのロボット」とか(笑)。そういう工夫が必要かもしれません。ただ、今はまだできていないから「たられば」の話にしかならないですけど、もし、将来、そういうふうになったとしても、すべての場面で「機械が優しくみえる」とは限らないと思うんです。

羽生:人間の感情も極めて繊細です。

中島:人間だと、思いやりのある人はどこに行っても思いやりのある人でいられます。けれど、ロボットの場合、たまたまこの場面ではOKだけど、ちょっと場面が変わっただけで、非常に冷酷に振舞っているように思えてしまうということも、あるんじゃないでしょうか。

羽生:確かにマニュアルの対応ではうまくいかないと思います。

中島:人間にとって最も重要な「生存とは何か」あるいは「何をするとうれしいか」というのは、同じハードウエアである人間同士ならば、聞かなくてもわかるじゃないですか。ところが、人間とロボットのように、ハードウエアがちがうと、いちいち相手に聞いて、学習していかないと、基本的にわからない。ある程度は学習できると思うけど、全部を想像するっていうわけにはいかないでしょうから。

羽生善治(はぶ・よしはる):将棋棋士。2016年10月18日現在、王位・王座・棋聖の三冠。1970年、埼玉県生まれ。
小学校1年生のとき、同級生から将棋の駒の動かし方を教わって将棋を始める。1982年、奨励会入会試験に合格。1985年、四段に昇段してプロに昇格。史上3人目の中学生棋士となる。
1996年2月、将棋界で初の7タイトル独占を達成。現在、全7タイトルのうち竜王を除く6つでの永世称号の資格を保持。さらに名誉NHK杯選手権者の称号を保持し、7つの永世称号の保持は史上初。