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羽生善治三冠、生存本能に縛られないAIは「創造的」たりうるか(5/6ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.3

2016.11.07

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「人なりの発想」を捨ててはいけない

羽生:今年の春、NHKスペシャルの取材で、ディープマインド社のハサビスさんと話をしていて、いろんな世界、いろんなジャンルでAIが進んでいることを感じました。

Demis Hassabis(1976年7月27日 - )
英国の人工知能研究者、脳科学者。16歳の時、飛び級でケンブリッジ大学に入学。2010年、DeepMindテクノロジーズを共同で立ち上げ、CEOを務めた。のちにグーグル傘下となった同社が開発した「アルファ碁」は、2015年10月、世界最強と言われる囲碁棋士を倒した。2016年5月に放映されたNHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る』のなかで、羽生氏はハビス氏を訪ね、対談している。

中島:ほぉ。

羽生:最近だと「バッハ風の作曲ができるプログラム」などもつくっているという話が出たんです。そのとき「音楽というのは、非常に数学的だから」と言われたのが、印象的でした。

中島:特にバッハの音楽は、そうですね。

羽生:だから、数学的なものに関して言うと、イノベーションは起こしやすいのかな、と。逆に、長編小説の執筆など、数学的に置き換えることが非常に困難なもの、置き換えるハードルが高いものなどは難しいという傾向があるのではないでしょうか。ですから、私はその話を聞いて「そのジャンルがどれだけ数学的か」ということが、1つの物差しになるのかなと思いました。

中島:数学的っていうのは「プログラム化できる」「アルゴリズムにのる」ということです。その点で、さきほど羽生さんが話された「大事なのは2番目に踊り出した人」という話が、いい例だと思うんです。

羽生:と言いますと?

中島:1人目は、ランダムに踊りを始めていいわけです。しかし、2番目に踊り出す人には、1人目のランダムな踊りを評価するための知性、評価基準が必要になります。

羽生:そういうものなのですか。

中島:昔から思っていたんですが、創造性やイノベーションなど、ランダムなことをするという意味でいうと、コンピュータは得意なんですよ。

羽生:それはとても意外に感じました。

中島:逆に、人間は、あまりランダムなことができない。それは、まさに羽生さんがおっしゃられた「生存本能」があるからです。

羽生:なるほど。

中島:やっぱり大事なのは、ランダムに始めたことではなく、それが、いいか、悪いかの判断のところにあると私は思ってきました。そういう観点からすれば、「2人目が大事」というのは、とても納得できる話です。

羽生:最近は、こういうことも考えています。仮にAIがすごく進んで、学習した結果で「こういうふうになりました」と告げたとします。でも、AIのなかで何が起こっているのかは、わからない。出てきているのは、結果や結論だけ。ただ、だんだん、それが浸透していって、確率的に正しく、実際に効果や成果もあげるということになると、それって……なんて言ったらいいんでしょうかね……まあ、そういうふうになってしまうと、あとは、その結果や結論を信じるか、信じないか、ただそれだけの話になって、理屈としては理解できなくなってしまうとか……そういうこともあるのかな、と。

中島:なるほど、そうですね。

羽生:もちろん、それでいいのかもしれないんですけど、人間は人間なりに考えたり、発想したり、いろいろ考えていくっていうことについて、やっぱり捨ててはいけない、やめてはいけないという気がすごくしています。

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