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羽生善治三冠、生存本能に縛られないAIは「創造的」たりうるか(2/6ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.3

2016.11.07

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予想通りに不合理な人間

中島:そういう意味では、「生き残る本能」の面白い例として、「イルーシス(Eleusis)」というカードゲームがありますよ。

羽生:どんなゲームですか? 聞いたことがないので教えてください。

中島:基本的な遊び方として、親が1人と、子が何人かいます。親は、出せるカードの秘密のルールを決めます。例えば、「赤のカードの次は偶数で、黒のカードの次は奇数」とか「数字の7以下の次は、8以上のカード」などというルールを決めます。ゲームが始まると、子は順番にカードを出していきます。

羽生:最初は何もわからない状態からスタートするのですね。

中島:子たちは自分の選んだカードを出して、そのカードに対して、親は自分が秘密に決めているルールに合っていれば「正しい」、合っていなければ「間違い」と答えます。ルールに合ったカードは、その場に残してよくて、間違っていたら手札に戻します。子どもの上がり方は2つあります。1つは、多くのカードを出して自分の手札をゼロにすること。もう1つは、親が決めたルールを見抜くことです。そして、ルールを当てた方が、得点が高いんです。

羽生:面白そうなゲームですね。

中島:そうすると、面白い現象が起きるんですよ。ルールを知るためには「正しい」と思うカードより、「間違っている」かもしれないと思うカードを出す方が、ルールを知る手がかりになります。つまり、二分法を使って、正解にたどりつきやすいんです。ところが、大抵の場合、生存本能と同じで、子は、手札を減らせる「正しい」と予測したカードばかり出す人が多いんですよ。これではルールを当てることができません。

羽生:そうなんですか。

中島:つまり、それが最適戦略ではなかったとしても、つい、生存本能を優先させる動きをしてしまう。羽生さんがおっしゃるように、人間の知能には、そういう特徴があちらこちらに散見されます。このような特徴は、経済学だと「予想通りに不合理」と言われています。そういう題の本(ダン・アリエリー『予想どおりに不合理』)が出ています。

羽生:「合成の誤謬(ごびゅう)」のようなものでしょうか。ミクロで正しく、マクロでは間違っている。

中島:人間は、さまざまな局面で、不合理な決断をします。でも、それは予想されてもいる。「合理的とは言わないけれど、人間にとっては正しい方法だ」という、面白い話なんです。

羽生善治(はぶ・よしはる):将棋棋士。2016年10月18日現在、王位・王座・棋聖の三冠。1970年、埼玉県生まれ。
小学校1年生のとき、同級生から将棋の駒の動かし方を教わって将棋を始める。1982年、奨励会入会試験に合格。1985年、四段に昇段してプロに昇格。史上3人目の中学生棋士となる。
1996年2月、将棋界で初の7タイトル独占を達成。現在、全7タイトルのうち竜王を除く6つでの永世称号の資格を保持。さらに名誉NHK杯選手権者の称号を保持し、7つの永世称号の保持は史上初。

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