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羽生善治三冠、人間とAIは対局時の「本能」が違う(1/6ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×羽生善治(将棋棋士) Part.2

2016.10.31

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 日本のAI研究第一人者の中島秀之氏と“最強の棋士”と称される羽生善治氏との対談は、「独創的な一手」という話題を契機として、「なぜAIは棋士が指せなかった新手を指せるのか」という議論に発展し、やがてそれは、人間が生来持っていて、現在のAIが持ちえない“本能”という深遠なテーマにつながっていきます。

(左:将棋棋士の羽生善治氏、右:東京大学特任教授の中島秀之氏)

(文・構成/佐保圭、写真/涌井タダシ、協力/松原 仁=公立はこだて未来大学副理事長、高柳浩=公立はこだて未来大学 客員教授、撮影協力/日本ビジネスシステムズ)

AIに感情移入できる可能性

羽生善治氏(以下、羽生):前に孫正義(ソフトバンクグループ社長)さんと話したとき、「100億の人間と100億のAIが暮らす世界」という話が出ました。そういう世界になってしまうと、100億と100億で、民主主義でいうと五分五分ですから、それぞれの意見や意思や気持ちも尊重しなければいけない。そうなると、人間がAIに何かを頼んだときに、AIが「いや、面倒くさいから、やらない」と言ったり、逆に、人間がAIから「やれ」とか言われるかもしれないので、結構、いろんなことが起こるのかな、と。

中島秀之氏(以下、中島):SFでは、その手の話が昔からいっぱいあります。コンピュータ・シミュレーションの中に知能をつくって、それが死にそうになると、人間が助けに行く話とか。

羽生:人間に「思い入れ」が生まれてしまうのですね。

中島:やっぱり、AIの研究に携わっている人たちは、自分たちがつくったプログラムの権利というか、「AIにも個性がある」という話を受け入れやすいですね。

羽生:プログラムにも違いはありますし、成長も続けてゆくので長く関わるとそのように感じやすいかもしれません。

中島:言い切っていいのかどうか、わからないけど、そもそも、意識は情報じゃないですか。

羽生:意識には、「情報があるということが分かる」側面もあると思います。

中島:意識が情報だと考えれば、コンピュータの上であろうと、人間の脳のハードウエアの上であろうと、基本的には同じことだと思うんです。今の何も言わないプログラムには感情移入ができないけれど、将来、AIがどんどん賢くなって、それこそ「疲れた」とか「これは、こうやった方がいいんじゃないですか」と言い始めたら、感情移入してしまうと思います。

羽生:確かに今でも、人間に対応してくれるロボットが修理に出されたとき、良かれと思って、傷とかもきれいに直して持ち主に戻すと、逆にクレームが来る、みたいなことがあるらしいですね。接しているうちに、ロボットとかそういうものに対しても、人間に対してと同じような感じで、思い入れを持つのかなと思いました。

中島:そういう話は、SFにもありますよ。家政婦ロボットが、ウイルスにやられるか何かして、だんだん機能が低下したとき、バージョンアップする前の状態に戻せば直せるんだけど、そうすると、バージョンアップしたあとの記憶がなくなってしまう。じゃあ、どうするか。本人っていうか、本ロボットは「いやだ、死んだ方がましだ!」って言うし、持ち主の人間の方も、悩んでしまうんです。

羽生:ロボットとの思い出は人でも同じでしょうし、そのように言われたらますますバージョンアップしづらくなりますよね(笑)。

中島:結局、記憶なんですね。傷とかも含めて、記憶というものが、すごく大事になってくる。

中島秀之(なかしま・ひでゆき):東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。
1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャー計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。
2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。

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