前回、中島氏と松原氏は「『シンギュラリティ』という言葉が、本来とはちがった意味で使われている」と指摘し、その“本来の意味”について語り合いました。今回、対談のテーマは「AIも超えられない“人間の知能”の素晴らしさ」へと広がります。

左:東京大学特任教授の中島秀之氏、右:公立はこだて未来大学教授の松原仁氏

(文・構成/佐保 圭、写真/涌井タダシ、協力/高柳 浩=公立はこだて未来大学 客員教授、撮影協力/日本ビジネスシステムズ)

人間の知能が「90」ならAIは「1」

――「シンギュラリティ」の本来の意味はわかりました。それでも「AIが人類の知能を超えて、もうすぐ『ターミネーター』の世界が来るんじゃないか」っていう不安をぬぐいきれないのですが

中島:ちょっと不謹慎かもしれませんが、我々の実感としては「そんなことになったらおもしろいよね」って。

松原:そうですね。

中島:だって、今のAIには、そんな知能、ないからね。

――AIには人類を超えるほどの知能がないということですか?

中島:たとえば、アインシュタインのような天才の知能が「100」で、凡人の知能が「90」くらいだとすると、AIの知能は「1」という言い方をしています。

――AIの知能は、そんなに低いんですか?

中島:今のAIは1か2くらいでしょうね。

――しかし、人間はAIにクイズや碁で負けたわけですから、やっぱり、AIの方が人間よりも頭がいいと思ってしまうのですが?

中島:それは、みなさんが「私は頭がいい」とか「頭が悪い」とかって言うとき、学校のテストの成績を基準にしているからですよ。

中島秀之(なかしま・ひでゆき):東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。
1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。
2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。