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AIは5歳の子どもに勝てない(5/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×松原仁(公立はこだて未来大学 教授) Part.4

2016.08.22

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5歳までは教育よりも学習が大切

――ミンスキーの話から考えると、知能を発達させるには5歳までの教育が大事ってことになるのでしょうか?

松原:5歳までが、めちゃくちゃ大切です。

中島:ただし、大事なのは学習で、教育ではない。私は、学習と教育はちがうものだと思っています。学習は「自発的にやること」。教育とは「大リーグボール養成ギブス」で、要するに「無理やり型に嵌めること」。いい例は、ゴルフのスイングです。人間の体はぐにゃぐにゃで、すごく自由に動くのに、それを型にはめて「このスイングをしなさい」というのが、ゴルフのレッスンでしょ?

松原:そうですね。

中島:文部科学省は「創造性の教育」と言う言葉を使っているけど、子どもが一番創造性を持っているのに、なぜ、教育して型に嵌めようとするんだろう? 型に嵌めないと社会生活ができないから、子どものまんま大人になったらたいへんなことになるから、というのが理由なんだろうけど。

松原:「こういう枠組みで考えて、こういうことをやると、いまの社会でうまくいくよ」と教育しようとしている。

中島:私は、たとえ教育しても、子どものころに学習した能力は失わずにすむと思っている。だから、5歳までの教育は大事だと思わないけど、5歳までに学習することは、とても大切なことだと思う。

――では、5歳までにどんな学習をさせればいいんでしょうか?

中島:無理やり、何かをさせる必要はありません。子どもって、動けるようになったら、いろんなものを舐めるわ、かじるわ……あれが学習です。放っておけば、勝手にやる。たとえば、ものを壊すことによって、いろんなことを学ぶ。私なんかも、小学校の低学年の頃、家じゅうの電気製品を分解してました(笑)。

松原:親が子どもに「機械を壊すチャンス」を与えてあげるのがいいんですよね。

中島:最近は、過保護すぎる親もいて、落ちて怪我しないよう、高いところに上らせないから、子どもの恐怖心が育たないケースもあるらしいね。

松原:昔の子どもは、1mくらいの高さから飛び降りて、痛い思いをして、それで、自分の身長と距離でどれくらい飛び降りられるかを学んでいた。なのに、今は親が少しでも危ないとやらせないから、最近、ニュースで報道されているような、高い階層から飛び降りても大丈夫だって思ってしまう危険な子どもになっちゃう。びっくりするような話ですが、転んでも手が出ない子もいるんだって。普通は、幼い頃にたくさん転んで『手を出さないと痛い目に合う』って学習するんだけど、5歳までに転ばせてないから……。

中島:人間の子どもが"子どもの知能"を身に付けられていない。

松原:逆に、AIの赤ちゃんロボットを世の中に出して、人間の子どもが5歳までに体験することを実際に学習させることができれば、さっき話していた常識推論のようなものも、備わるかもしれない。

中島:そういう"子どもの知能"や常識推論を身に付けることができるようになったら、そのときこそ、AIの知能を人間の知能に近づけられるかもしれないね。

【次回予告】
 ミンスキーの哲学にある「5歳児の"子どもの知能"のすばらしさ」を紐解くことで、"知能"の本質に迫った中島氏と松原氏は、次回、自身がどのようにしてAIの研究の世界に足を踏み入れ、今日まで歩んできたのかに触れながら、「日本のAIの黎明史」について語り合います。

中島 秀之(なかしま・ひでゆき)
中島 秀之(なかしま・ひでゆき)

東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。

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