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AIは5歳の子どもに勝てない(3/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×松原仁(公立はこだて未来大学 教授) Part.4

2016.08.22

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AIは東大に入れるか

中島:あの「東ロボくん」のプロジェクトが、いい例かもしれないね。

松原:「ロボットは東大に入れるか」っていうプロジェクトですね。

中島:たしか、現状のAIで、東大は無理だけど、かなりの割合の大学に合格できるんだよね。

松原:そう。今のAIの実力で、もう8割の大学には入れちゃう。

東ロボくん
2011年、国立情報学研究所(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構)が中心となって立ち上げたプロジェクト「ロボットは東大に入れるか」で研究・開発された人工知能。ベネッセコーポレーションの協力のもと、2015年6月に実施された進研模試「総合学力マーク模試」を受験して、偏差値57.8の成績をおさめた。この成績は、私立大学の441大学1055学部、国公立大学の33大学39学部で、合格可能性80%以上に相当した。

中島:ただ、いい成績をおさめたけど、そのAIのプログラムは、決して、テストの内容を理解しているわけではない。表面的な操作だけで問題を解いている。僕も結構、入試の要領がよかったから、よくわかるんだけど。

松原:要領がよくないと、入試のテストでいい点はとれない(笑)。

中島:「次のうち正しいのはどれか?」っていう選択問題は、まったく知識がなくても、テクニックさえ理解していれば解ける。今のAIは、そのテクニックを使って解いている。私たちのなかでは、常識だけど。

松原:そう、“受験に強い人”の間では常識。

中島:知識があるんじゃなくて、そういうテクニックがある。

松原:中島さんは高校受験で灘高、僕は中学受験で私立武蔵に入ったから、そういうテクニックには長けているけど、じゃあ、その受験のテクニックが人生にとって何の役に立つかっていうと、何の役にも立たないんだよね。

中島:もうちょっというと、いろんなテクニックを教えてもらわなくても、システマティックに答えを出す方法もあるよね。問題の出題者の心理を考えると、たとえば5択には、まず正解が1つある。そこから、1部の条件を変えた別の選択肢をつくって、まわりにちらばすことが多い。そうなると、すべての選択肢を比較して、一番共通点の多いものが、正解になる。

松原:問題をつくる人の心理を読めば、不正解の選択肢は正解からずらしてつくるから、全体の“平均”となっているものが正解ってことですね。

中島:そう。

松原:もちろん、答えがわかったときには使わないけど、ちょっとでも怪しいと思ったときは、そのテクニックで解いた。

中島:ちなみに、司法試験の選択問題をそのテクニックで解いてみたら、全部、まちがえてしまった(笑)。つまり、司法試験の問題をつくっている人は、このテクニックを知っていたわけだ。

松原:要するに、将棋や囲碁、会計や法律、医療にしても、受験で試されている“大人の知能”の範疇にある。はっきりと言えば、AIは、やさしいところ、つまり、自分が得意とする“大人の知能”の分野から攻めている。一見、その分野での勝利が目立つから、世間のみなさんは「AIが人間の知能を超えたんじゃないか」って、心配する。でも、はっきり言って、今のAIは、小さな子どもが普通にやっている「積み木遊び」も満足にできない。

中島:できないよね。

松原:ミンスキーによると、積み木遊びほど高度な知能の遊びはない。子どもの積み木遊びって、積み始めて、しばらくすると、急に、うわっと壊しちゃう。それって何なんだ?って。どこまでが「積み上げモード」で、どこからが「壊すモード」になるのか、どうして「新たな積み上げモード」に入るのかは、AIからすれば、まったく「謎」でしかない。

中島:積み木遊びをプログラムとして書くのは、かなり厳しいね。

松原:だから、子どもの頃に身につけていることが、一番難しい。逆に言えば、そういう“子どもの知能”を子どもの頃に身に付けていないと、もうアウト。たしか、ミンスキーは「5歳児をシミュレーションできれば、AIはできたことになる」と言っている。そういう意味では、今のAIも、まだまだ、できていないよね。

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