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AIは5歳の子どもに勝てない(2/5ページ)

中島秀之(東京大学 特任教授)×松原仁(公立はこだて未来大学 教授) Part.4

2016.08.22

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「頭がいい」や「悪い」は、人間の知能全体の1割にすぎない

――テストの成績と頭の良しあしはちがうんですか?

中島:たとえば、人工知能学者のマーヴィン・ミンスキーは昔、「人工知能で“大人の知能”はつくり出せるけれど、“子どもの知能”をつくるのは難しい」と言っていました。“大人の知能”というのは、学校のテストもそうですが、教科書や医学書にある「言葉で書けるルール」のことです。コンピュータで言えば「プログラム」になります。その“大人の知能”は人間の知能のなかでいうと、たぶん、1割くらいの働きしかしない。

――たった1割ですか?

中島:ええ。みなさんが「頭がいい」とか「悪い」とか言っているのは、“人間の知能”全体の「1割」の部分にしかすぎないと私は思っています。言い換えれば、テスト勉強では、知識や問題の解き方を「どれだけたくさん暗記できたか」という、ある意味、人間の一番苦手なところで勝負しているわけです。

松原:そこは、AIの得意分野ですからね。

中島:それに対して、子どもがわかっているようなこと……たとえば、医療系のAIのマイシンの話で出てきた「注射は怖い」とか、あるいは「転んだら両手で防がないと痛い思いをする」とか「高いところから落ちたら怪我をする」などは“人間の知能”の9割くらいを占めていて、その“子どもの知能”によって、人類は生存しているわけです。

松原:そう、生き残っていくために必要な知能。

中島:だから、“人間の知能”っていうのは、9割の“子どもの知能”という土台の上に1割の“大人の知能”が乗っている……そんなイメージを私は持っています。

松原:私もそうだと思います。所詮、医学や法律なんていうのは、大人になってから勉強しても身につくくらいだから、子どもが生きるために身につけていく知能に比べたら、かなり簡単なんですよね。

松原仁(まつばら・ひとし):公立はこだて未来大学副理事長 システム情報科学部 複雑系知能学科教授。1959年、東京都生まれ。
1986年、東京大学大学院情報工学専門博士課程修了、同年、電総研に入所。1990年頃には、事例ベース推論(Case-Based Reasoning:CBR)の研究にも従事。中島秀之氏らの「協調」に関する研究にも協力している。
ロボカップ日本委員会会長、情報処理学会理事など、AI業界の要職を歴任。2000年、公立はこだて未来大学に着任して以降は、情報技術を用いた観光についての研究もしている。ちなみに、将棋はアマ五段の免状を持つ。

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