AIの方が人間よりも安全に運転や操縦ができる確率は高い

松原:AIよりも人間の暴走の可能性の方が、はるかに高い。人間の暴走をコントロールする方が、社会にとっては急務だと思うんだけど......でも、暴走してしまう人が時々出ちゃうのを防ぐのは、なかなか難しいわけですよね。年間およそ4000人も、人間が運転するクルマの交通事故で死んでいる。AIの自動運転に変えたら、たぶん、死亡事故の数は1桁減るのに、どうして、すぐにでもAIに変えていかないのか。

中島:「AIは絶対に間違わない」とは言わないけれど、飛行機の自動操縦のように、AIの方が人間よりも安全に運転や操縦ができる確率は高い。

松原:AIの方が人間よりも、まちがうことは少ないから。

中島:ところが、世の議論は「でも、もしAIが飛行機事故を起こしたら、誰が責任を取るの?」となる。パイロットがいたら“パイロット”という人間の責任を追及できるけれど、もしもAIで事故が起こったら、いったい誰の責任にしていいのかわからない。

松原:AIがクルマを運転した方が事故は減ると思うけど、「もしAIが事故ったら、誰が責任取るんだ?」っていう議論がまず出てきて、先に進まない。酔っ払い運転でたくさんの人が亡くなっている状況で、何を言ってるんだ?って思う。少なくとも、AIは酔っ払い運転なんかしない。

中島:「責任って何なんだろう?」というのをちゃんと考えるべきなのに、そのあたりの認識が曖昧なまま、AIの自動運転について議論されている気がするね。

松原:僕は、2016年6月に人工知能学会の第15代会長を退任しましたが、そういうことを考えなきゃいけないと思ったから、在任中の2014年5月頃から、AIの「人工知能学会倫理委員会」の立ち上げの話を始めて、その年の12月に第1回の倫理委員会を東京大学で開催しました。これからも、中島さんがおっしゃったような論点を整理する必要があります。

中島:あると思う。

松原:でも、基本的には、人間側の意識問題なので、どこかで折り合いをつけなきゃいけない。

中島:そういうことだね。

松原:いまは、たぶん「AIは使って便利なんだけど、ちょっと不気味」っていうところでしょ? その不安感は、乗り越えないといけない。これまでも乗り越えてきた......だって、自動車もできた頃は“不安な道具”だった。飛行機だって、最初の頃の人たちは「命がけ」で乗ってたはずです。ずっと昔、人類が火を使い始めた頃から、その不安感を乗り越えて、私たちは文明の利器を使いこなしてきた。だから、人類が進化の過程で新しい技術を取り入れる過渡期に「ちょっと不気味だよね」と感じる不安は、これまでと同様、乗り越えるしかないと思う。