将来的にはAIに働いてもらって、人間は働かなくてもよくなる

――でも、そうなると、意地悪な見方をすれば、AIのおかげで、私たち人間は、自分で考えたり、決めたり、自己管理する能力を衰えさせてはいませんか?

松原:自分で考えなくなったということは、楽になったということ。今まで人間が賢くならなければいけなかった理由は、賢い方が生活しやすかったから。でも、日常生活で考えたり管理しなければならないところをAIにサポートしてもらえば、生活はとても便利で楽なものになります。

中島:だから、さっきも言ったように、将来的にはAIに働いてもらって、人間は働かなくてもよくなる。もう少し丁寧な言い方をすれば「やりたくないことはやらなくてもいい。お金に関係なく、やりたいことをやればいい」ということ。今、実際に、そういう動きが、ソフトウエアの分野では、すいぶん前から始まっているよね。

松原:「オープンソース」のこと?

中島:そう。みんな、お金をとらずに開発に参加している。「そのコード、俺が書いたんだ」っていう自己満足だけを対価にして。そういう社会でしょ? 「自分の能力を活かして、この部分に貢献した」というのが大切で、収入につながらなくてもかまわない。

松原:そう、ある意味「ボランティア」ですよね。AIのサポートによって、本来の自分のやりたいことが、見返りなく、見返りを期待せず、できるようになる。そういう意味では「自分の気持ちに純粋になれる」っていう言い方もできるかもしれない。

――ただ、みんなが対価を求めないで好きなことだけやり始めたら、社会の秩序は維持できなくなりませんか? たとえば、部下が上司に「俺は対価をもらって働いているわけじゃないから、もう、あんたの言うことを聞く必要なんてねぇよ」とかって。

中島:人間にとっては、基本的に、社会に必要とされることが幸せでしょ? だから「あなたの言うことなんて聞かない、俺の勝手だ!」って振る舞うことは、本人の幸せにはならない。

松原:今、AIは過渡期にあるけど、もっとAIが進歩すれば、人間にそういう不安や不快さを感じさせないで、働かなくてもすむ社会をつくるようになる......AIが、まるで空気のような存在になって......。

中島:そこから先は、哲学的な話になってくるね。