日本のAI研究を牽引してきた中島氏と松原氏の対談は、前回の「AIでできること、できたこと」から「AIでもできないこと」へと展開します。そして、今年春の「AIの書いた短編小説が文学賞の1次選考を突破」というニュースや、現状のAIの弱点について語り合ったあと、話題は「もしAIが暴走したら……」へと移っていきます。

AI界の巨人2人による対談は、「AIでできること、できたこと」から「AIでもできないこと」へと展開……(左:東京大学特任教授の中島秀之氏、右:公立はこだて未来大学教授の松原仁氏)

(文・構成/佐保 圭、写真/涌井タダシ、協力/高柳 浩=公立はこだて未来大学 客員教授、撮影協力/日本ビジネスシステムズ)

AIではできないこと、できそうにないこと

――欧州チャンピオンのプロ囲碁棋士が、GoogleのAI「アルファ碁」に打ち負かされた時点で、もう、人間が勝てる対戦ゲームはなくなったということでしょうか?

松原:完全情報ゲームでは、そういうことになりますね。

――完全情報ゲーム?

松原:完全情報ゲームというのは、オセロ、チェス、将棋、囲碁など、相手の情報が全部わかっているタイプのゲームです。

――では、いわゆる対戦型ゲームで人間がAIに勝つのは無理なんですね…。

松原:いいえ。まだ、不完全情報ゲームでは、人間の方が強いです。

――不完全情報ゲームとは、どんなゲームですか?

松原:相手の手が伏せられて見えない『麻雀』や、黙って欺いている「狼」役の人間を探し出す『人狼』など、敵の情報が全部わかっていないゲームが不完全情報ゲームと呼ばれています。

中島:一番典型的なのはポーカーです。自分の手は全部見えるけど、相手が何を持っているのかわからない。情報が一部欠落しているゲームでは、まだ人間の方がかなり強い。

――そのお話には、なんだか、すごく勇気づけられます。ほかにも、人間にはできるけど、AIには難しいものってありますか?

中島:AIの最大のハンディキャップは「人間と同じ体を持っていない」という点なので、そこが関わってくるようなことは、いまのAIには難しいですね。

中島秀之(なかしま・ひでゆき):東京大学大学院情報理工学系研究科 先端人工知能学教育寄付講座特任教授、公立はこだて未来大学名誉学長。1952年、兵庫県生まれ。
1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。
2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。