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間違っても失敗しても大丈夫、と自由研究本が言う理由(3/3ページ)

『ナショジオ式自由研究 親子でできる たのしい科学実験 』

2016.07.19

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問題解決力が身に付く

 振り返れば、子ども時代の夏休みの自由研究は、間違ったことを書かないように、という前提で取り組んできた気がする。結局のところ、既に原理がわかっていることをトレースする実験や観察をしてまとめ上げ提出していた。「自由研究は間違わないことが最優先」という考えは、いつしか習い性になって、自分の子どもの自由研究にも同じことを求めていたかもしれない。本書を読むと、「何から何までお膳立てして、100%成功する(あるいは、成功するように年長者が導く)ことに、何の意義があるのか」と言われている気がしてくる。

 本書の日本語版監修を務め、子ども向け科学書の著作もある滝川洋二さんは、本書の前書きに次のように記している。

 「この本を読んで、僕はびっくりしました。『人は作り笑いと本当の笑いの違いを見 抜けるか』『ネコのIQはどうやって測定できるか』など、日本では取り上げられたことのない実験がたくさん紹介されているからです。しかも、この本で実験の課題や方向を紹介し、子どもが考えながら挑戦し、失敗を通じて『どうやって成功するか』にたどりつく、知識だけでない『工夫のすすめに大きなねらいが定められていること』が特徴です。この本は、実際にやってみること、失敗を恐れないことを本気で勧めていて、本の中にたくさん失敗の経験も紹介されていることにもびっくりです」

 滝川さんは続ける。

 「こうした失敗を通じて工夫を体験することは、アメリカの教育の新しい方向で、この本がアメリカの教育の先端の紹介になっているのです。こういう本は、日本ではないなと思って読み進めていくと、この本の後半には、オバマ大統領の写真までのっています。サイエンスフェアという、ホワイトハウスがよびかけておこなわれる子どもの探究実験の発表会で、子どもがオバマ大統領に自分が工夫した実験を紹介しているのです」

 実験だけでなく、最初から答えがわからないという意味ではビジネスも同じだ。任された仕事がうまくいかないとき、その原因を尋ねられて「言われた通りやりましたよ」とか「それなら、いいやり方を教えてください」などと、開き直ったかのように答えるビジネスパーソンもいるようだ。

(写真:PIXTA)

 しかし、言われた通りやるといっても、条件が違えば、それに応じてやり方を変えてこそうまくいくというもの。仮説を立てて実施し、うまくいかなければ結果を分析して次の解決策を見つけ出して修正する。ビジネスに限らず、人間の生活に試行錯誤はつきものだ。問題に立ち向かう過程で想像力や創造力を働かせて解決していく経験は、生きていくうえでも大きな力になるだろうし、それこそ小さいうちに体験して根付かせる類のものだと思う。

 「オバマ大統領は、アメリカに科学教育を広めることを一般教書演説等で優先課題として取り上げ、STEM(ステム)教育という動きをバックアップしています。STEM教育は、そのねらいを具体化し、全米レベルの科学スタンダード「次世代科学スタンダード“Next Generation Science Standards(NGSS)”」2013年の策定で多くの州が新しい教育に取組む本格的な動きが始まっています。このNGSS の動きを実験を通して知ることができるのがこの本です」(滝川さん)

 科学教育を通じて問題解決能力の涵養(かんよう)に力を注ぐ米国の姿を垣間見た思いがする。でも、そんな話は抜きに、ページをパラパラとめくれば面白い数々の実験に目が留まる。本書のタイトル通り、大人と子どもで実験に取り組んでも、大人のほうが夢中になってしまうかもしれない。失敗の原因探しに夢中になり過ぎて、自由研究を子どもの代わりに提出するようなことになったら……。そこは、みなさんのご判断でお願いします。

(文/武内太一=前・日経ナショナル ジオグラフィック社 編集人)

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