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宇野常寛「お金には(たぶん)ならない」ビジネス

【新連載】宇野常寛:「仕事で自己実現」を目指すべきか?

2015.10.26

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評論家の宇野常寛さんが、読者の疑問や悩みに答える連載が今回より始まります。第1回の質問は「仕事で自己実現を目指すべきか?」。仕事をする目的として、「自己実現」がよく挙げられます。でも、本当に仕事で自己実現を目指すべきなのでしょうか?

Q.仕事をする目的として、「自己実現」がよく挙げられます。仕事を通して自己実現を目指すということについて、宇野さんはどうお考えになりますか?

A.初回から、しかもビジネスジャーナルサイトでこんなことを言ってしまうと問題があるように思わなくもないのですが、僕は仕事で自己実現を目指す、なんてことは滅多に考えない方がいいと思っています。

 僕自身は、極めて直接的に仕事と自己実現が結びついていると思います。でも、これは単純に「そうしか生きられなかった」からで、積極的に選び取ったわけではありません。こんな本を書いて、こんな雑誌をつくりたい、とか、世の中にこんなメッセージを出したいという欲望が先にあって、それが実現できるなら別にお金は1円もいらないと思っていたのが20代の僕でした。

 だから、仲間を集めて同人活動からスタートしました。当時は僕は京都で会社員をやっていて、ほぼ趣味の領域で同人活動をやっていただけでした。それが、だんだんとやってる間に、もっといいものを読者に届けたくなって、書く仕事や、雑誌をつくる仕事に24時間、365日の自分の時間的・労力的なリソースを全部注ぎ込みたいと思うようになってきたわけです。その結果、数年後には脱サラ「せざるを得なく」なってしまいました。

 仕事を変えなくても、仕事に持ち込まなくても自己実現ができるなら、それに越したことはない、というのが僕の考えです。趣味でも恋愛でも、ボランティアでもなんでもいいと思うのですが、自己実現の手段は仕事以外にできれば複数もっている方が「合理的」ではあります。「食べるための仕事」にそれ以上の意味を持たせると、単純に一つの手段(仕事)で二つ以上の成果(お金と自己実現)を獲得しなければいけなくなって難易度が跳ね上がりますし、「仕事で自己実現をする」という生き方は、いわゆる喰うための仕事=ライスワークが伴う苦痛が軽減される代わりに、仕事がダメになると自己実現まで一緒にダメになってしまうというリスクがあります。よっぽど特別な理由がない限り、僕は他人には勧めません。そもそも、これは「そうとしか生きられない人のやむを得ない生き方」だと思うからです。こういう生き方に憧れる気持ちも分からなくないですが、少なくとも僕の経験上、ほとんどの人がほかに選択肢がなく仕方なく仕事と自己実現を結果的に=で結んでいるように思えます。残酷な話ですけれど、たぶん、こうした生き方に憧れている時点で、それは「向いて」はいない。

 ちなみに、だからこそ、僕個人は趣味を大事に生きています。仕事と自己実現が近づきすぎてしまったので、他の生き甲斐を大事にしたほうがいい、と思ってるからです。それでは、また次回。不定期更新らしいので、書きやすいお題が振って来たときにお会いしましょう。

※このコラムでは、宇野さんへの「質問」を募集しております。仕事のこと、人間関係の悩み、政治・経済、果ては恋愛やサブカルチャーまで、宇野さんに悩みを相談したい、宇野さんの考えを教えてほしいという方は、こちらのフォームから「質問」をお送りください。(編集部)

宇野 常寛(うの・つねひろ)
評論家
宇野 常寛(うの・つねひろ)

1978年生。青森県生まれ。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『原子爆弾とジョーカーなき世界』(メディアファクトリー)、『楽器と武器だけが人を殺すことができる』(KADOKAWA/メディアファクトリー)。共著に濱野智史との対談『希望論』(NHK出版)、石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)。編著に『静かなる革命へのブループリント: この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)、『資本主義こそが究極の革命である』(KADOKAWA)、『ものづくり2.0』(KADOKAWA)、『これからの「カッコよさ」の話をしよう』(KADOKAWA)。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。京都精華大学非常勤講師、立教大学兼任講師のほか、J-WAVE「THE HANGOUT」月曜ナビゲーター、日本テレビ「スッキリ!!」コメンテーターも務める。

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