10月末、国土交通省は2016年1-10月の訪日外国人数が2000万人を突破したことを発表。年間で前年比20%増の2400万人前後になる勢いだという。一方、7~9月の外国客の消費総額は約5年ぶりに前年割れした。

 ここ数年、盛り上がっていたショッピング・ツーリズムの関係者は戸惑いを隠せないことだろう。だが、奇態な消費行動だった中国客の「爆買い」がひと段落したことで、むしろあるべき姿に戻りつつあるのが、今日の訪日旅行市場だとみるべきではないか。インバウンド市場は、小売りや製造業だけでなく、日本を訪れた外国人の衣食住を含むあらゆる遊興と消費活動に関わる領域に開かれている。パイが拡大したぶん、伸び率は昨年より落ちても、年間400万人も増えることになるのだ。

中国の旅行博覧会の位置づけが変わってきた

 数は増えているのに消費総額が減ったのは、今夏の円高の影響や「爆買い」終了のせいだといえるが、そればかりではない。せっかく日本を多くの外国客が訪れているのに、ショッピング以外の消費をうまく引き出せていないこともある。それはなぜなのか。

 ひとことでいえば、海外に対する情報発信のあり方に問題があるというべきだ。

 羅徳共拓公関顧問(上海)有限公司(RF KYODO)の深澤和博氏は、日本国内の商業施設や観光施設、化粧品メーカー、地方自治体などのインバウンド・プロモーション業務に従事。なかでも力を入れてきたのが、ここ数年、中国人観光客の増加が著しい岐阜県の観光PRだ。現地の旅行市場のリアルな動向に精通している彼に、日本のインバウンド・プロモーションの問題点について話を聞いた。以下、一問一答。

RF KYODOの深澤和博氏

――中国側から見て日本のインバウンド・プロモーションのどこに疑問を感じるか。

<深澤> いま中国の旅行市場ではプロモーションのあり方が大きく変化している。その変化にどれだけ我々は対応できているかという点だ。

 上海では毎年5月に上海世界旅行博覧会(SWTF)、隔年で11月に中国国際旅游交易会(CITM)が開かれるが、ここ数年、来場者が大きく変わってきている。以前は若い世代が多くいたが、最近は年配者の比率が高い。理由ははっきりしている。今日、上海から多くの20代や30代の若い個人客が日本を訪れているが、彼らは旅行博覧会を以前よりも海外旅行の魅力的な情報入手の場とは考えていないからだ。それどころか、私の周りの上海在住の若者の中には、旅行博覧会に一度も行ったことがなく、そもそも旅行博覧会の存在すら知らない人も多い。

 いまや中国から日本を訪れる観光客の5割が個人客といわれるが、上海のような先行市場では8割を超える。こうした市場の変化にともない、旅行博覧会出展がプロモーションの場としてふさわしいかどうか、冷静に検討することが必要な時期を迎えている。旅行博覧会出展以外の、時代の変化に適応した、多様な情報発信手段も併用していったほうがよいと思われる。

中国の旅行会社ブースは年配者が多い(2016年5月の上海世界旅行博覧会会場にて)
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