ミシュランの星付きレストランをはじめ、世界の一流レストランを訪ね歩くという美食家「フーディーズ」。いったい彼らは何を求めて世界を飛び回るのだろうか。

 筆者の古い友人でトラベルジャーリストの橋賀秀紀氏は、ほぼ毎月のように世界各地を旅している。筆者からみると、とても浮世離れした人だが、その目的のひとつが食べ歩きだ。

 世界の食の専門家たちが選ぶ「世界のベストレストラン50」のうち、橋賀氏はすでに19軒に足を運んでいる。そんな彼は、2000年代以降、世界の美食のトレンドが大きく変わってきたという。

フレンチからスパニッシュ、北欧へ

 「私が海外に美食を訪ねて旅に出るようになったのは1990年代からだが、当時はクラシックなフレンチが王道だった。2000年代に入って、スローフードやオーガニック、ミニマリズム、「地産地消」といったコンセプトが注目され、フレンチからモダン・スパニッシュへ美食の中心が移っていった。
 2010年代になると、北欧のコペンハーゲンにある『NOMA』が『世界のベストレストラン50』で4回トップになるなど、話題のレストランが地域的に広がりを見せていった。訪ねるべき場所がいろいろあるということは、フーディーズにとって面白い時代の到来といえる」

コペンハーゲンにある話題のレストラン「NOMA」(写真提供:橋賀秀紀)

 なかでも橋賀氏が3回足を運んだという「NOMA」は、ここ数年、世界で最も話題を呼んだレストランだろう。映画『NOMA ノーマ、世界を変える料理』(英 2015年)で知られるように、同店のシェフ、レネ・レゼピ氏は、料理に昆虫のアリを使うといった思いがけないレシピがよく話題になる。

 橋賀氏によると、「一見奇をてらったやり方のようにも見えるが、南欧のように柑橘類のとれない北欧で料理の酸味を補うため、地元の食材の中から同じ役割を果たす存在として蟻酸を発見したのがその理由。この逸話からも、彼がいかに地元の食材を重視しているかわかる」という。

今年8月、橋賀氏が「NOMA」を訪れた際に出た一品「A light stew of fruit and vegetables(こんぶ、かぼちゃ、薔薇、フィンランドのキャビア、麹のソース)」(写真提供:橋賀秀紀)

 2015年1月、レネ・レゼピ氏はマンダリンホテル東京の招待で来日。日本の食材を使った料理を提供し、話題を呼んだ。このとき、彼のために日本の食材探しの道案内をしたのが、レフェルヴェソンスの生江史伸シェフだった。前回紹介したように、生江氏は海外の個性的なレストランで修行し、語学力もあることから、彼の案内役を務めることになったのだった。

「NOMA」内の食堂。内装は実にシンプルだ(写真提供:橋賀秀紀)

 レネ・レゼピ氏は、東京以外でも、シドニーのような海外の都市で現地の食材を探し歩き、自らのアレンジを加え、新しい料理を提供している。その期間中、同店のスタッフを連れていくため、コペンハーゲンの店は閉店してしまうという。「こうしたローカルな食材へのこだわりに、彼の食に対する思想が表れている」と橋賀氏は指摘する。

※「NOMA」とレネ・レゼピ氏については以下の記事が詳しい。

世界一のレストラン「ノーマ」シェフ、レネ・レゼピの大冒険@日本(nippon.com 2015.03.02)
デンマークレストラン界の鬼才、レネ・レゼピとは?(BRUTUS 2016.5.10)

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