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梶原しげるの「プロのしゃべりのテクニック」ライフ

【最終回】“奇跡”をものにする、山岳カメラマンの「運のつかみ方」(2/3ページ)

2016.12.22

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一番大変なのは「思わぬことが何も起こらない時」

 「走るカメラマン」の平賀さん。普段はエベレストやマッキンリーのみならず、様々な山に登り、自然の素晴らしさをスチールで、ビデオで撮り続け今大注目だ。

梶原:「自然相手の仕事は、いろいろ思わぬことが起きて大変なんでしょうねえ」

平賀:「それが逆なんですよ。一番大変なのは、思わぬことが何も起こらない時なんです」

梶原:「え?」

平賀:「安定した好天で穏やかな山の景色なんて3分も見れば飽きませんか。一方、一天にわかにかき曇り、雷鳴がとどろき、たちまちの豪雨。こりゃあ撮影不能か……と思ったら雲の切れ間から鮮やかな虹が広がった! 虹は雨が降らないと出ないんですよね。これがフワーッといきなり弧を描く。興奮してカメラを回すと、茂みからヒグマの親子がぬーっと姿を現す、なんてハプニングも。怖いけど、映像的には『美味しい』ですよね。我々はクマに気付かれないようにそっと身を縮めながらそのまんまレンズにおさめるから作品の魅力はさらに増します」

(写真:PIXTA)

梶原:「なるほど……」

平賀:「しばらくすると山の端が、にわかに赤く染まり始めます。豪雨 → 虹 → ヒグマ → 夕焼け。沈む直前の太陽の見事なまでの赤さと言ったらない。それが刻一刻と色を変え見事なグラデーションを見せてくれる。『いいぞー! 虹、いいぞー夕焼け!』山に向かって大声で感謝の言葉を叫びながらカメラを回し続ける。たった1人で。一見困難な“思わぬ事態”が発生したからこそ、良い作品が出来上がった……」

梶原:「思わぬことは待てばいつかはやってくる?」

平賀:「いやいや、普通は待っても待ってもまるで無駄な場合が多い。天気は予報通り理想的なのに、期待したイヌワシも、キタキツネやエゾナキウサギ(適当……)でさえ姿を見せない。ひたすら待って、何も撮れないまま日が暮れていく。『なんで俺はこんな意味の無いことやってるんだ。どの面下げて編集者の所へ行けって言うんだ……』そんな風に自分を責めたり運の悪さを呪ったりしたことは数え切れないほどあります」

梶原:「自分の力ではどうにもなりませんしね……」

平賀:「でも、今はこういう待ち続ける時間が『奇跡の瞬間を迎えるまでに必要で大事なプロセスなのだ。待つという一見無駄な時間に、幸運の貯金が積み立てられるんだ』そう、思えるようになりました」

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