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梶原しげるの「プロのしゃべりのテクニック」ライフ

いつ電話するかあらかじめメールで連絡…面倒くさい時代だな(3/4ページ)

2016.12.08

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険しい表情でも甘い言葉を「書く」ことはできる

 列車内でのケータイ電話による通話が問題になったのは遙か昔のことだ。今では、そもそも混み合う電車の中で「大きな声で会話する人の姿」など、めっきり減った。

 夜遅く集団で乗り込んでくる、少々お酒に酔ったにぎやかそうな連中でさえ、電車に乗りこむなり、「車内マナーを守る物静かな若者たち」に変貌する。彼らが道徳心あふれる好青年だから、ではない。

 電車内は「命より大事なメールとLINEの確認場所」だからだ、と私は思う(違うかも……)。

 これは何も連中だけの話ではない。会社帰りのサラリーマンも、デートを終え彼女を自宅まで送る彼氏も、送られる彼女も、女子会を終えたおばさんグループも……。ひとたび車中の人となれば、人類にとってその場所は、あたかも「私語厳禁の世界」であるかのように、会話も、もちろん笑い声も聞こえてこない(下手な翻訳ものみたいな表現だ……)。

(写真:PIXTA)

 嘘だと思ったら夜11時を過ぎたあたりの地下鉄に乗ってみるといい。全員がそれが義務、仕事のようにスマホを開き、メールやLINEのチェックと送受信を黙々とこなし始める。どうやら我々のコミュニケーションは「音声会話」から「文字送受信」へと大きく舵を切った現れがここにあるともいえる(いえないかもしれないが……)。

 かつて著名な作家から、思うように作品が書けないとき、夜の混み合う電車に乗って、人々が語り合う話を盗み聞き、そこから様々な物語を紡ぎ出したと伺ったことがある。私もそれをまねて、じゃれ合うカップルの痴話げんかめいた会話を興味深く聞くウチ、電車を乗り過ごし、中央線の終点・高尾駅から帰れなくなった昔を思い出した。

 いま恋人たちはひとつのスマホに互いの言葉を書き入れ合ったりしている。

 ある夜、列車のドアに寄りかかり、スマホの画面をにらみつけるように険しい表情をしたまま指を動かす女性の、その画面をそっと覗いたことがある。

 「何か深刻な事態を綴っているようだが、大丈夫だろうか?」

 チラッと見えたものは(覗き込んだのだが……)、意外にも「“ハートマーク”満載の楽しそうでポジティブな文面」だった。文字情報では、メールの文面と送り手の感情や表情は連動しないとの意外な事実を発見した瞬間だ(大げさか……)!

 どんな嫌な顔をしていても、甘くやさしい言葉はいくらでも書ける。

 一方で、電話の生声にはそのまま正直な表情が付いてくる。「馬鹿野郎、この野郎」と声で怒りながら「にっこにっこの満面の笑顔」を見せられるのは、竹中直人さんが天才だからできる技だ。

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