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今月の『ナショナル ジオグラフィック日本版』環境

スコットランド伝統の「荒れ野」を襲う、買収の嵐(1/2ページ)

2017.05.18

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多年生の低木、ヘザーの花が夏のムーアを美しく彩る。この群生地は、東部のマー・ロッジ・エステートを流れるディー川のほとりまで広がっている。ナショナル・トラスト・スコットランドが所有するこの場所では現在、森林再生の取り組みが進行中だ。(Jim Richardson/National Geographic)
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 英国スコットランドの観光パンフレットにほぼ必ず登場し、小説『嵐が丘』や映画『ブレイブハート』の舞台にもなった「ムーア」と呼ばれる荒れ野が、岐路に立っている。

 2015年7月30日、ある不動産の売買が完了した。オランダ人の実業家が、アラン・マクファーソン=フレッチャーから、先祖伝来の所有地「バラビル・エステート」を買い取ったのだ。売買価格はおよそ500万ポンド(約7億円)。2800ヘクタールの広大な土地は、石造りの屋敷や周囲の「ムーア」と呼ばれる荒れ野、地所内を流れるスペイ川とともに、225年間にわたって受け継いできた一族の手を離れた。

 「ここでの暮らしは素晴らしいものでしたが、もはや潮時だったのです」。取引を終えたマクファーソン=フレッチャーは、自宅でウイスキーのグラスを手にそう語った。温厚で気さくな白髪の元当主は、ほっとした様子だった。スコットランドでこのような地所を維持していくには、気力も財力も必要だ。フレッチャーはすでに65歳、子どもたちは「賢明にも」跡を継ぐ気は毛頭なかったという。

 バラビルでは屋敷の引き渡しに向けて、邸内のあらゆる装飾が撤去された。一族代々の肖像画は取り外され、マホガニー材の食卓、立派な銀器などは倉庫にしまわれた。壁を飾っていた動物の剝製も片づけられた。

 バラビルはこれまで、英国式の狩猟用エステートとして利用されていた。利用客は高額な料金を支払って、地所内のムーアや川でシカ狩りやライチョウ狩り、サケ釣りなどを楽しむ。だが今後は、購入者一族の住まいになるという。

 もっとも昨年5月に提出された申請書によれば、農園の建物をカフェやビジターセンター、イベント会場として転用し、約140台分の駐車場も設けるという計画があるようだ(記事の執筆時点では審議中)。近隣の村々では商業化の悪影響を懸念し、この計画に反対している。

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