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十社十色で成功からは学べない、失敗からこそ学べる(1/4ページ)

経営の失敗学【後編】

2016.12.21

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(早稲田大学ビジネススクール教授 菅野 寛)

 前回は「ビジネスとは本質的に失敗するものである」ということを述べた。もちろんビジネスで失敗したいと思う人はいない。誰もが成功したいのである。では、どうやったら失敗を回避できるのか? どうやったら成功できるのであろうか? 成功から学ぶのか? 失敗から学ぶのか?

成功学の幻想

 世の中には成功例を紹介する本や記事が溢れかえっているが、成功事例からの学習は注意を要する。なぜならば、成功は十社十色なのである。ある会社の固有の成功はその会社、そのタイミング固有のコンテクスト(背景状況)の中での成功である。したがって他社の成功を表面的にモノマネしてもまず成功しない。そもそも競争戦略の要諦は差別化、すなわち「他社と違うことをする」ことである。他社のモノマネではそもそも差別化にならない。

 前回紹介したように、ソニーはかつて、常に他の家電メーカーではまずやらない奇天烈なことに挑み、失敗も多いが、そのようなソニーの姿勢に魅力を感じている熱烈なソニーファンがプレミアム価格を払うため、全体では経済的に辻褄が合うというモデルで成功していた。

 ところがソニーはある頃からEVA(経済的付加価値、Economic Value Added。コンサルティング会社のスターン・スチュワート社が開発し、商標登録を行なっている)という指標を導入した。これは事業やプロジェクトの収益性を判断する上で、論理的には優れた指標である。

 ところがEVAで判断すると、ソニーの強みの源泉である奇天烈なプロジェクトはことごとく中止した方が良いという結論になってしまう。EVAで判断して奇天烈なプロジェクトを次々と中止していけば、当然ながら、短期的には企業全体の業績は良くなる。ところがその結果、常に新しい変わったことに挑戦するというソニーの先進的なイメージが薄れていき、熱烈なファンが離れてしまったのだ。結果としてソニーの業績は悪くなっていった。

 このように「他社がEVAを入れて業績が向上した」という成功例を見て、そのままモノマネするのは非常に危険なのである。単純に狭義の経済合理性ではなく、もっと大きなコンテキストの中で考える必要がある。

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