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日本の不動産価格のインフレーション―アメリカが主導権を握っている―(1/4ページ)

『ニューノーマル』―不動産市場を通して読む―(第1回)

2016.09.21

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(早稲田大学ビジネススクール教授 川口有一郎)

1 不動産価格インフレ

 ご存知の方もいるかと思うが、2013年7月頃から日本では不動産価格が高騰している。だが今回の不動産市場のブームは過去の不動産バブルとは異なる。図1.1に過去30年間の東証不動産業種の株価指数の推移を示す。このグラフから次のことが分かる。この間に三回の不動産市場のブームがあったが、今回の不動産株価のピークは過去二回のバブルの頂点に比べて約8割程度と低い。

図1.1 過去30年間における不動産価格の推移
出所:Quick Astra-managerを用いて筆者作成
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 また、今回の不動産株価の上昇は中央銀行によるリフレーション政策のタイミングと一致している。つまり、米連邦準備理事会(FRB)の三度目の量的緩和が発表された2012年9月から日銀による異次元の金融緩和がアナウンスされた2013年4月にかけて不動産株価が急上昇した。これに対して、前回の不動産バブルでは、その発生の時期と金融政策のタイミングの関係が明確ではない。つまり、日銀は、2001年3月から2006年3月の間、最初の金融緩和策・量的緩和策を実施した。この金融政策のタイミングと不動産バブルの発生時点(2005年7月)および終焉の時点(2007年5月)は一致していない。

 ところで、実物の不動産価格は上場不動産株価に対して約1年~1年半の遅れをもって動くことが知られている。この関係から上記の二つのこと―価格の水準が前回のピークにくらべて明らかに低いこと、また今回の価格上昇は日銀およびFRBのリフレ政策によるものであること―は実物不動産市場についても言えることである。

 今回の不動産価格の上昇はバブルによるものではなくインフレである。これに対する反証は次である。例えば、不動産投資信託が保有するビルの賃料はこの期間ほとんど上昇していないのにその株価は1.7倍になった。また、例えば、東京銀座のビルの賃料は約3割程度しか上昇していないのに対してその価格は約2倍と賃料の伸びを大きく上回った。バブルとは資産価格のうち「経済の実体」から離れて上昇した部分をいう。ここでの経済の実体を賃料とするならば今回の不動産市場のブームはバブルと言える。

 この反証に対する反証は次である。不動産の賃料は硬直的であるのでその動きは価格に比べて緩慢である。また、この期間には不動産投資のベースとなる10年国債利回りは劇的に下がった。今ではマイナスの領域にまで下落している。今回の不動産価格の上昇は金利の下落でほぼ説明される。

 アベノミクス以降の不動産市場におけるマクロ的な過熱感の原因は、リフレ策―不動産市場に出回るお金が増えたこと、金利が劇的に低下したこと―による価格上昇である。なお、これはミクロ的には局地的に例外があることを否定するものではない。

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