先行者に果敢に挑戦するビジネス感覚
先行会社があって、追いつけないくらい流行っていても、果敢にまねをするというビジネス感覚は、むしろ昔の日本企業のようだ(マネシタとか言われながら、もとの製品より使い勝手がよい、故障が少ない製品を出し、むしろ先行製品に勝つ会社があったが、今の日本企業にそんな元気が感じられない)。検索エンジンの世界でも、ヤフーが独占状態だったのに、グーグルが追い抜かしたように、ガリバーがいてもあきらめずに戦う姿勢がアメリカ人の元気のよさを示すようだ。
そして、もっと驚いたのは、ほとんどのドライバーがUberにもLyftにも両方登録している。UberがLyftに登録したら、Uberの登録を外すと脅したくても、そんなことをしたら、Lyftのほうは同時登録を認めているから、Lyftのほうがむしろ車が多くなってしまう。痛いところを突かれたのは確かなようだ。
これに関連して言わせてもらうと、Uberの正確なナビゲーションのほかに、民間のナビゲーションシステムに、ウエイズ(Waze)というものがある。日本の渋滞情報は警察が発信するので、主要幹線だけが対象だが、Wazeは、一般人が渋滞を見つけたら通報するシステムらしく、どこの道の渋滞情報もわかる。それをAIが計算して、一番早く着く道を教えてくれる。到着予測時間が恐ろしく正確で、高速道路も途中で降りてどの裏道を通るかを教えてくれるのだが、アメリカにしては恐ろしく狭い道も含まれている。
これも、私の知るアメリカ人とは違う発想のものだ。
私の留学中のアメリカ人は個人主義が叩き込まれていたのか、一般の人たちが協力するということの少ない国だった。日本人の助け合いの精神を羨ましがられたことが多かった。
LinuxやWikipediaなどを通じて、お互いが助け合って、どんどんよいものを作るという経験をアメリカ人がしてきたせいなのか、こういうお互いが助け合って、全米のリアルタイムの渋滞情報が出るようになった。生活保護バッシングや老人バッシングのように、福祉に頼る人をたたく国民性に日本人がなってしまったのと逆の方向性を感じた。
ITがアメリカ人の心性を大きく変えてしまったのだろう。
実際、スティーブ・ジョブズのビジネスモデルにしても、彼が経営者として優秀である以上に、アメリカ人全体の消費者心理を変えたことが大きいように思える。