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「3冊だけ」で仕事術向上! ――奥野宣之「ビジネス書、徹底比較レビュー」ビジネス

「老後貧困」を避けるために今できること ――社会保障と自衛策を学ぶための3冊(2/5ページ)

2015.10.30

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巨大化する「一寸先の闇」

 まずは『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』から。ソーシャルワーカーで貧困対策のNPO代表の著者が、今まさに日本中で起きている「老後の貧困」をレポートしている。

「一億総老後崩壊」はやや煽りすぎにも思えるが、要は「誰でも老後貧困になる可能性がある」ということである。
 どういうことか。

 もちろん、若いうちから大きい会社に勤め、年金をきっちり納め、貯金して、子供を独立させて、大きな病気やケガもなく……と、すべてがうまくいけば老後貧困にはならない。
 ところが、なにか歯車が違えば、貧困ルートに向かう可能性がある。

 たとえば、本書が代表的なきっかけとして挙げているのは、次のようなことだ。
●親の介護……介護離職で生活が不安定になったり、介護費用の出費がかさんだり
●独立できない子供……引きこもりやニートなど、子供の世話で家計が苦しくなる
●大病、ケガ……手術費や治療費で貯金や退職金が吹っ飛ぶ
●離婚……料理や家事ができない男性は生活が荒む

 人生が「一寸先は闇」なのは、今も昔も変わらないのだが、経済の停滞や高齢化の結果、あまりにも「闇」に落ちていく人が多くなってしまった、というわけだ。

 とくに本書に出てくるある高齢男性の話はインパクトがあった。彼は62歳の退職時点で3000万円の貯金があったにもかかわらず、すべて失って、今は生活保護を受けている。

 カネはどこに消えたのか。
 最大の原因は、二度におよんだ心筋梗塞の治療費である。

「病院の医療費が高くてね。心臓の手術は難しいらしくて、診察代や薬代も高かった。入院したときも個室だったから、退院のときにすごい金を取られたよ。それも1年の間に2回倒れたもんだから大変」と話す。
 残りの貯蓄は、その医療費と生活費にすべて消えたそうだ。しかし、62歳からのたった7年間で、3000万円もの現金がなくなるものだろうか。わたしが「高額療養費制度は利用しなかったんですか?」と質問すると、「そういう制度があるってことを知らなかった」と言う。
 それから生活が破綻するまでは、あっという間だった。(下流老人/P.62 ※太線強調は引用者によるもの。以下引用部も同様)

 ちょっとズッコケそうになるやりとりだが、他人事ではない。筆者も「高額療養費制度」という制度があるなんて、まったく知らなかった。

 こういう場合、家族がいればいろいろと調べたり役所に相談してくれたりしそうなものだけれど、彼は独身。心筋梗塞で生きるか死ぬかというときに、カネの心配をする余裕はないだろう。

 3000万円の貯金があっても、下流老人になるときはなる。
 もちろん本人の責任も大きい。ただそれでも気の毒な話である。

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