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地方で働く

今こそ「地域自立力」で地方創生を~都心再生と地方創生(2)

東京都心等大都市の競争力を高めるための策に続き、今回は「地方創生」のための革新策について、民間都市開発推進機構(MINTO機構)の都市研究センターで副所長兼研究理事を務める佐々木晶二氏に、近年の成功例などをもとに解説してもらう。

※MINTO機構=民間の都市開発事業を推進するために、資金、情報、実施手法などの面から支援や調査研究を行っている一般財団法人

まず「地方創生」の意義とは何か?

 世界経済と競争して成長の牽引役となる東京都心等の再生(前回の論考参照)と同時に、日本の国土と社会を支える地域(地方部)が自立的・内発的に発展していくことが、日本の地域社会の安定と生活環境の維持のために不可欠である。ただし、こうした「地方創生」を図る際に、東京都心から財源を吸い上げ、国から地方に対して予算をばらまく従来の方法には問題がある。大都市の恩恵によって地域経済を支える政策では、東京都心等の生産性に抑制を働かせかねないと同時に、日本の国土全体、国の経済全体から見た時に残っている非効率な部分や、非生産性的な部分を温存してしまう。

 日本の地方部は、豊かな自然環境と生活環境、強い地域共同体意識をもち、そして、東京都心と比較しても圧倒的に豊かな社会インフラの整備を達成している(図1)。この社会インフラや、社会環境を生かせば、自立的に地方創生を進めることは十分に可能であるし、後述のとおり、その成功の芽が現れ始めている。これらを応援するための環境整備が、国の重要な責務になるはずである。

図1 「事業区分別人口あたりのストック」。2009年度時点の1人あたりの社会ストックの額(純資本ストック)を都道府県別に表している。「交通・運輸」には差があるが、「生活基盤」の整備は全国で平均的に進んできた様子が分かる(資料:「日本の社会資本2012」2012年11月、内閣府)

地方創生が目標とすべき指標は何か?

 地方創生の究極の目的は、そこにいる地域の住民の幸せを維持していくことであるが、中低所得層の場合、幸福度は所得に比例するとされている(注1)。そこで筆者は、地方創生が目標とすべき指標は、「1人あたりの所得額の維持」とするのが妥当と考えている。

 地方部では既に高齢化が進展しており、これからは所得を稼ぎ出す人口層(=生産年齢人口)が減少していく。つまり、現状維持では1人あたりの所得は減ってしまう。これを増やす、あるいは今後も維持するためには、地方部においてもイノベーション(とそのための革新策)によって生産性を高めることが不可欠である。ただし、地方部でのイノベーションは東京都心とは異なり、地域経済の中でのお金の循環を円滑にしていくことが主眼になる。世界と競うわけではなく、ローカルな経済の中で生き残るためのイノベーションであることに留意するべきである。

 以下に、地方部における革新策=革新を支えるための改善策を具体化してみる。

自立的な地方創生に向けて(1)
「基本的なフレームを確立する」

<地方部の若手経営者と大都市のイノベーターの連携>

 まず、地域にいるやる気のある若手経営者と東京等大都市のイノベーターとのシナジー効果を狙い、その連携を支援する。

 現在、成功例として注目を集める地域自立型の地方創生プロジェクトとしては、例えば、公民連携事業の岩手県紫波町「オガールプロジェクト」(注2)、まちなかリノベーション事業を手がける「北九州家守舎」(注3)などの取り組みがある。これらのプロジェクトに共通するのは、地元にいるやる気のある若手経営者と大都市のイノベーターがダイレクトにつながり、チームを組み、地域経済の環境の中で採算を取ることのできるプロジェクトを立ち上げていることである。

岩手県紫波町「オガールプロジェクト」の一つ、2014年に開業した「オガールベース」。バレーボール専用体育館、宿泊施設などを複合している(写真:吉田誠)

 「所得を上げる」ということは「お金を稼ぐ」ということにほかならない。これを役人に頼るのは無理で、経営者が担うべき課題であるという基本的な認識は極めて重要なポイントである。

<国は、政策金融、事業継続性のチェックを役割とする>

 国や地方公共団体は、民間事業者に対し、補助金や交付金など「渡し切り」で終わる資金で支援しない、という姿勢を持つことが重要である。

 地方創生プロジェクトに対して補助金や交付金を投入すると、初期の設備投資が大きくなって持続的な採算性を悪化させる。あるいは、それを運営経費に当てた結果、補助金等が切れると事業が消滅する。いずれかの結末になるのは、過去の事例からも明らかである。そもそも、地元の経営者が立ち上げる地方創生プロジェクトの命題は、「地域経済の中で儲ける」というものになるはずなので、渡し切りの補助金等およびそれにまつわる制約は邪魔になる。国の重要な役割は(1)地方金融機関と協調して「政策金融」による支援を行う、(2)民間事業者と共に「継続性」に責任を持ち、経営指導を行う──ということである。

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<国は、地元経営者による事業創出のための...

佐々木晶二=民間都市開発推進機構都市研究センター副所長兼研究理事 [日経アーキテクチュア]

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