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革新性をもたらす洞察は、現場の「実践知」に根差す【前編】――日本企業の強みを活かす帰納的飛躍を起こそう(3/4ページ)

2014.02.17

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知識創造経営を成功に導くには「フロネシス」が不可欠

――野中先生がSECIモデルを提唱し、世界的に注目されるようになると「ナレッジ・マネジメント」が大きなムーブメントになりました。多くの企業がナレッジ・マネジメントのためのコンサルティングを受けたり、専用のICTシステムを導入したりしましたが、あまり効果が出ていないと嘆くところも少なくありません。

野中 当時のコンサルティング会社の提案やICTシステムのほとんどは「ナレッジ・マネジメント」をリストラの手段の一つとしてしか捉えていませんでした。つまり、ICTによって形式知をデータベース化すれば経営効率が上がると考えたわけです。いわばMBA的な発想です。一方、SECIモデルはイノベーションの研究から生まれたものです。知識創造のためには、形式知の基盤となる暗黙知を豊かにする共同化が重要で、その後の表出化、連結化や内面化というすべての段階を強化しなければならない。つまり、暗黙知と形式知のスパイラルアップが知識創造の基本であることが十分にできなかったために効果が出なかったものと思います。

 ICTは、組織的知識創造のプロセスにおいても重要な役割を果たしますが、ICTが単なる暗黙知から形式知へという一方向の変換や、効率重視の変換を促進することに留まるのではダメです。むしろ、ICTを使えば、われわれは暗黙知をより自覚することができ、暗黙知をより豊かにすることが可能になります。ICTは、人間の潜在能力を、時空間を超えて解き放つツールの一つです。形式知を前提とするPDCAサイクルと、暗黙知を基盤とし、アナログ・デジタルを総合するSECIスパイラルの違いはここにあります。この2つは異なるパラダイムなのです。

 最近は、こうした暗黙知の重要性も理解され、ダイナミック・ケイパビリティ、アジャイルスクラムや、オープンイノベーションなどの知識創造を経営の根幹におく知識創造経営の考え方が広まってきて、SECIモデルを持続的に回す仕組みを取り入れる企業が増加しつつあります。

 その後の研究で、組織の中でこのSECIスパイラルを持続的かつ高速で回していくためには、ある種のリーダーシップが必要なことがわかってきました。このリーダーシップとはどのようなものか、ということを10年来研究してきました。そこでたどり着いたのが、古代ギリシアの哲学者、アリストテレスが提唱した「フロネシス」という概念です(図)。英語圏では、フロネシスを「Prudence(賢慮)」や「Practical Wisdom(実践的な知恵)」と説明していますが、われわれは、日本語では「実践知」と呼んでいます。

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