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30m巨大望遠鏡で「第二の地球と生命」「加速膨張」など宇宙の謎に迫る【前編】(1/7ページ)

2013.07.12

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 日本の科学技術を結集した「すばる望遠鏡」は世界トップクラスの性能を誇り、2000年の観測以来、数々の新発見で世界的な成果を上げてきた。自然科学研究機構国立天文台は新たに国際共同プロジェクトで口径30メートルの超大型望遠鏡(TMT)の建設に着手する。今度はどんな謎解きに迫るのか。TMT計画を推進する家正則室長と青木和光さんに、TMT計画で中心にすえる三つのテーマについて聞いた。

インタビュー/長坂邦宏 nikkei BPnet編集
構成/宮島 理

宇宙は「加速膨張」している

――今年4月に米国ハワイ州から建設許可が下り、国際共同プロジェクトの「口径30メートル光赤外線望遠鏡(TMT)計画」がいよいよ本格的に動き始めます。2014年に建設を開始し、2022年には観測を始める予定ですね。
 大型望遠鏡といえば、ハワイ島マウナケア山頂にある日本の「すばる望遠鏡」(口径8.2メートル)が有名です。2000年に本格観測を始め、さまざまな新発見、なかでも宇宙初期の銀河を次々に見つけてきました。

「ダークエネルギーの性質の解明が三つのテーマの中で一番野心的なもの」と語る家正則TMT推進室長。国立天文台、東京大学大学院、総合研究大学院大学の各教授を兼務する 撮影/中野和志

家正則TMT推進室長(以下、家) 特に観測的宇宙論は、1990年代にNASA(米航空宇宙局)の「ハッブル望遠鏡」が打ち上げられたことと、米カリフォルニア大学連合の「ケック望遠鏡」を先駆けに、「すばる望遠鏡」やヨーロッパ南天文台の「VLT」、米国立光学天文台の「ジェミニ望遠鏡」といった口径8~10メートル級の望遠鏡が立ち上がったことで、大きく前進しました。

 それまでの4メートル級では不可能だった高感度で高解像度の観測ができるようになり、遠くの天体がよく見えてきて、宇宙の理解が進んだんですね。

 実は1998年、絶対光度が一定と考えられるIa型超新星(*は下欄参照)を多数観測し、その見かけの明るさと赤方偏移(*)とを比べてみると、赤方偏移の大きいものほどそれまでの予想より暗く見えることがわかりました。宇宙が「加速膨張」しているらしいというわけです。それとちょうど相補的に、2003年に「WMAP」というNASAの探査機が宇宙マイクロ波背景放射(*)の温度分布を観測し、宇宙のゆらぎを調査しました。その結果を現代の宇宙論モデルで解釈すると、「宇宙の加速膨張」という同じ話が出てきたのです。

 この二つのことから、ビッグバンで誕生した宇宙は「加速膨張」していて、それを促す未知のエネルギーが存在することが推測できるようになったのです。

30m超大型光赤外線望遠鏡(TMT)の完成予想図。後方に見えるのが「すばる望遠鏡」(右)、二つの丸いドームが「ケック望遠鏡」を収めた天文台 提供 国立天文台
[画像のクリックで拡大表示]
Ia型超新星
 白色矮星の爆発によって生じたもので、きわめて明るく、その絶対光度は一定。みかけの明るさからその距離を算出できるため、遠い銀河の距離測定に利用される
赤方偏移
 救急車が遠ざかるときにサイレンの音が低くなるのと同様、遠ざかる光源から発せられた光の波長が伸びて長波長側(可視光でいえば赤に近い方)にずれる現象。赤方偏移を調べることで光源の後退速度がわかる
宇宙マイクロ波背景放射
 「火の玉」の大爆発で誕生した宇宙は当初、プラズマ状態にあったが、膨張するにつれて空間のエネルギー密度が下がり、陽子が電子を捕まえて水素原子が生じた。すると、自由に動き回っていた電子がなくなったことで、光があらゆる方向に直進できるようになった。その名残が宇宙マイクロ波背景放射で、ビッグバン理論を裏付ける証拠となっている
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